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覚悟を決めるため、三十代半ばの私は夢を追い求める時間に期限をつけることにした。
期限は一年間。
当然だが、やるからには全力を尽くそうと決意し、私と同等以上の知識と技術を持つ優秀な助手をSNSサイトを使って探すことにした。
私が望むレベルの逸材はいないと決めつけていたのだが、応募してきた佐藤という同年代の青年と連絡を取り、助手として雇ってみたら期待以上の働きぶりだった。
佐藤は仕事の飲み込みが早く、いろんなアイデアを出してきた。
だが、口と性格が悪かった。
ある日、家のすぐ隣に建っている小さな研究所で作業していると、佐藤が「あの、あんまり言いたくないんですけど」と言いたくてたまらなさそうな顔で言った。
「なんだ?」
「少しは最先端の技術を取り入れた方がいいっすよ」
「私の使う技術は時代遅れか?」
「そうですね。こんな古い設備の環境で斬新で高性能な製品を作れると本気で思ってるんですか? それに、『画期的なマシン』って漠然としすぎだし」
佐藤は、完全にナメた口調だった。
正直、私は怒りを通り越して、呆れてしまった。
「じゃあ、具体的に、何をどうしたらいいと思ってるんだ?」
「それ考えるの、あなたの仕事ですよ。俺、ただの手伝いですから。頑張って考えて下さい」
「……」
言葉が出なかった。
いくら優秀とはいえ、こんなやつを採用してしまったのかと、自分は人を見る目がなかったんだなと悔しくなった。
それから、私と佐藤は喧嘩ばかりして数えきれないほど衝突した。
しかし不思議なことに、口論や殴り合いをしながらも開発は着実に前進していた。
佐藤が、私に良い刺激を与えてくれる存在であることは認めざるを得なかった。
ある日、私たちはタイムマシンの開発に成功した。
「やったな、佐藤! これこそ画期的なマシンだ!」
「上手くいきましたね! これは画期的ですよ!」
「さっそく動かしてみよう」
「わかりました!」
二人で大喜びしたあと、私たちは百年前に移動することに成功して再び現在に戻ってくることができた。
興奮状態のまま喜びを分かち合い、感謝の言葉を言ってから佐藤を帰らせた。
佐藤はひどく疲れた様子だったが、表情を見ると達成感に満ち溢れているのがわかった。
私は、家に戻り妻に報告することにした。
どんな反応をするだろうかとワクワクしながら。
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