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まるで、殿様に捨てられそうになってる家来のような顔をして、斗真にすがりつく編集長。
彼も必死で苦しいだろうが、見ている側も皆、辛い表情を浮かべ顔をしかめている。
だけど、編集長は諦めない。
苦しみながらも顔の筋肉を総動員して、ニコニコ笑顔を作り、腰を曲げた。
『ささっ、日下部先生。こちらに……』
へりくだった姿勢で、斗真を別室に案内した編集長。
それを見る周りの皆は、一様に沈痛な面持ちで黙り込んでいた。
この場の誰もが分かっている。
無論、編集長もだ。
悪いのは斗真だと。
けれど、斗真が翔の作品を侮辱した事は誰も言わない。
編集長が斗真のご機嫌を取る為に、何か賄賂(わいろ)的なモノを渡すのであろう事を分かっていても。
この出版不況にあえぐ業界において、売れっ子の作家というのは、まさに金の卵そのものと言っていいからだ。
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