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そんな苦しい活動の中で翔が特に覚えているのは、この斗真の事はもちろんだが、それとは別に、とある女編集者から言われた言葉だ。
『翔さんが伝えたい想いも文体も、決して悪くないです。むしろ、私としては翔さんの小説大好きです』
『じゃあ……!』
パアッと顔を輝かせた翔に、その女編集長は辛辣な面持ちで告げる。
彼女自身、本当は翔に言いたくない。
翔の作品には魂がこもっているし、彼女は翔の作品が好きだから。
でも、編集者としては言わなきゃいけないのだ。
自分の言葉で翔が傷付くとしても、本当に翔の為を思うからこそ。
『でも翔さん……残念ですが、読者はこれを求めていません。読者が求めているのは、頑張って苦難を乗り越える主人公じゃなくて、チートで最初から強かったり、勝手に可愛い子達からモテて癒される主人公なんです』
『くっ……!』
『もしくは、頑張らなくてもいいスローライフや、ありえない展開のシンデレラストーリーとか。なので、求めてる物が違う以上、翔さんの小説は残念ですが……売れ、ません……』
翔はその女編集者の言葉を思い出し、晴天の下でガックリと肩を落としうなだれたのだ。
リアルな記憶は時として、現実と見分けがつかない時があるから。
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