1.四次元世界と向こう側

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1.四次元世界と向こう側

 一部のSFさんたちには意外だろうが、科学的に四次元を扱った最初の人物は、アイザック・ニュートンだ!  ニュートンと言えば、万有引力が有名だね。でも、この理論には困った側面があった。  丸い盆にビー玉を何個か転がしておく。ころころ、盆の中に散らばったよ。盆の表面の摩擦はゼロとしておこう。  ビー玉の間に働く万有引力により、すぐにではないが・・・何年か、何万年か先には、全てのビー玉が一箇所に集まるのだ。  世界が、太陽系が潰れてしまう!  ニュートンは悩んだ。惑星は太陽を回り、宇宙は存在している。潰れていない。  潰れないために必要なのが、物体の相互運動だ。万有引力と相互運動がつり合う事で、太陽系は存在している。当時は、太陽系が宇宙の全てと言っても、過言ではなかった。天球の星の正体は、まだ不可知な時代だ。  物体の存在を表すためだけなら、世界は三次元だけで良い。ここに相互運動を入れるため、グラフに時間軸を作って加えた。物体の運動を記述する四次元の学問として、ニュートンの力学は成立した。  それでも、時間軸の厚みをゼロとして、世界を切り出す手法は有効とされた。物体の運動量を無視して、静止質量を測る技術が進化していく。  19世紀、電気と磁気の研究が進む。  磁石を動かすと、隣接したコイルに電気が流れた。動かす方向を逆にすると、電気の流れる方向も逆になった。  ファラデーの発見をマックスウェルが方程式にまとめた。磁石を動かす原因と、電気が流れる結果を重視して、電磁気現象は空間を有限の速度で伝わるとした。  磁気と電気はコインの表裏な関係にあり、特別な手続きを経て、相互に変換が可能ともされた。  電流は空間を伝わる力なので、これを表すグラフには時間軸が必須である。時間の厚みをゼロで切り出す事はできない。ニュートン力学との決定的な違いだ。  万有引力とは別に、空間を伝わる新しい遠隔作用が現れた。世界が四次元では治まりきれない事態となった。  電磁気現象と万有引力を統一的に解釈しようと、科学者たちは知恵を絞る。  しかし、仮想粒子エーテルを使い、電磁波現象をエーテルが伝える波としてニュートン力学に統合する試みは・・・失敗した。エーテルが絶対静止でなければ、太陽が宇宙の中心に静止していなければ、エーテル仮説は成立しなかった。19世紀の末になると、太陽系の外が天文学のテーマになり始めていた。  20世紀になり、アインシュタインが光電効果を説明する『光量子仮説』を唱え、光と電子のエネルギー変換に端緒を開く。もちろん、ノーベル賞を取った。  物質とエネルギーがコインの表裏な関係にある・・・とてつもない仮説である。  続く『一般相対性理論』では、宇宙の四次元時空が重力で曲がっているとした。ニュートン以来、空間とは立方格子状の枠で書き表される規則正しい場だったのに、それが曲がっていると説く。  多くのSF関係者が四次元時空を勘違いして、パラレルワールドな異世界的にした物語を書いてしまった。最近は・・・さすがに減って、高次元空間とか亜空間と言う場合があるね。
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