0人が本棚に入れています
本棚に追加
7.失敗した科学・・・ワープ航法仮説
銀河系の中を、あるいは銀河から銀河へと、自由自在に飛びたい。SFの醍醐味だね。
問題は、銀河の端から端まで10万光年もあること、他の銀河まで100万光年以上も離れていること。光の速度でも、時間がかかり過ぎる。
超光速航法は・・・目処がたたない。なので、宇宙を飛び回るには別の方法が考えられた。『一般相対性理論』を使い、曲がった空間を使うことが考えられた。ワープ航法の登場だ。
さて、ワープ航法には2種類のやり方がある。
第1には、離れたA地点とB地点の間の空間を人為的に曲げ、A地点からB地点までの距離をゼロにしてしまう方法。
第2には、離れたA地点からB地点まで空間の穴を人為的に作り、そこを通る方法。
どちらも『一般相対性理論』から発想された。
第1方法を説明する時、一般的な空間を2次元で説明する。紙を折り曲げるようにして、離れたA地点とB地点をくっつける。空間を曲げる手段は語られない。
第2方法だが、空間の穴はブラックホールの研究から発想された。物質を無限に吸い込む様子が、底が抜けたバケツのようと思われた。
底抜けのバケツだとして、吸い込まれた物質が行き着くのは・・・ブラックホールの向こう側に、時間軸を逆転させたホワイトホールが理論から予測された。ブラックとホワイトをつないで宇宙の虫食い穴、ワームホールと言われた。実際問題として、事象の地平面の向こうは観測不可能な領域だ。何が起きていても、外からの観測では肯定も否定もできない。
とにかく、そんな訳で、ブラックホールからホワイトホールへ抜けることが構想された。
現状、我々が知る空間を曲げるものは質量だけだ。何かの魔法で宇宙船前方にブラックホールを出現させ、そこからワームホールをくぐることになる。ヒッグス粒子の多重効果なんかを期待しようかね。
さて、『スタートレック』のエンタープライズ級宇宙船が抜けられるワームホールとなれば、その断面直径は少なくとも100メートル以上必要である。が、地球質量を押しつぶしてブラックホールを作っても、その事象の地平面の直径は・・・わずか2ミリだ。アリもくぐるのに苦労するだろう。
ワープ航法に必要なブラックホールは少なくとも太陽の質量と同じくらいだ。
しかし、太陽と同じ質量を地球近傍の空間に出現させるのは、いかに一瞬でもマズイ。せめて冥王星軌道の外側でやってほしい。
ワープ航法が一般化すると、地球から冥王星まで行くより、太陽系外縁部からガミラス星へ行くほうが短くてすむかも。いやいや、突然現れる太陽質量の重力場で、カイパーベルトが乱され、彗星が多くなりそうだ。恐竜絶滅級の彗星が現れるかも。
やはり、質量以外の方法で空間を曲げたいものだ。重力式では、宇宙船は安全でも、星に安全なワープ航法は実現しそうにない。近傍の空間に多大の迷惑をかけない方法を探したい。
最初のコメントを投稿しよう!