第二章 模倣

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*  クズみたいな親っていろんなタイプがいるんだろうね。  なんでこんな親のもとに生まれてきたんだろうってよく思うんだ。毒親っていう言葉があるけど、本当にその通り。毒っていうか猛毒の域に達してるよ。  自分たちはクズのくせにわたしのことをクズだと思ってる。当たり前じゃないか。あんたらがクズなんだから、そこから生まれたわたしがクズじゃないわけがないでしょ。鳶が鷹を生むともでも思ったの。蛙の子は蛙なんだよ。クズの子はクズなんだよ。  逆に思うんだけど、わたしよりもクズなのに、ちゃんと愛されているヤツはなんなの。わたしよりもバカなのに、ちゃんと愛されているヤツはなんなの。  欠点があっても、愛してもらえるんだね。おかしいよ。不公平だよ。わたしと同じように愛されない虚しさを味わえばいいんだよ。  ねえ、愛せないんだったら、どうしてわたしを産んだの。産まなきゃ良かったでしょ。中絶でもすればよかったんだよ。こっちもさ、産んで欲しいなんて頼んでないから。間違って産道をくぐり抜けちまったんだ。  そもそもさあ、あんたらの汚い精子と汚い卵が合体したせいだよね。もっと言えば、あんたらのエゴで淫らなことをしただけだよね。  さぞかし楽しいセックスだったんだろうね。  仮にいるとしたらの話だけど、神様に言いたいことがあるんだ。生まれてくる前にさあ、「あなたは生まれてきたいですか?」って尋ねて欲しい。そしたら、わたしは「嫌です。生まれてきたくないです」って答えてあげるから。 インフォームドコンセントってあるでしょ。十分な説明と同意もなしに生まれてきたんですけど。  生まれてこなければよかった。同じようにみんなも生まれてこなければよかったんだよ。何もかも無のままでよかったんだよ。  みんな死んじゃえ。さっさと死んじゃえ。  人間界の偽善者たちはわたしの叫びを聞いてどう思うのかな。「いつか君のことを分かってくれる人が現れる」とか「思春期だから仕方がない」って言うのかな。そんな言葉が欲しいわけじゃないんだよ。気休めにもならねえし。  わたしのことを分かってくれるのはナオちゃんだけなの。「もう人間界にいるのが辛い」って言ったら、「殺せばいい」って返してくれそう。  そうだ。ナオちゃんみたいになればいいんだ。  でも、自信がない。ナオちゃんみたいになれるかな。まだわたしもナオちゃんと違って人間の一味なんだね。
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