第二章 模倣

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*  まだ人間らしい感情が残っているんだね。辛そうとか苦しそうとか分かるんだね。なぜか胸が痛いんだ。  わたしも同じだよ。行くあてなんてないんだよ。わたしを待っている人なんてどこにもいねえんだよ。だったら、こんな世界さっさと滅びろよ。神罰による大洪水、隕石、火山の噴火、核戦争。もうなんでもいいよ。もう終わりにしてよ。  あれからずっと考えていたんだ。どうすれば、世間の注目を浴び、ナオちゃんみたいな犯罪者になれるのかなあって。  少年院ってさ、わたしにお似合いだと思うんだ。もしかしたら、死刑かも。それでもいいよ。首にロープを巻いて、床がパカっと開いてあの世行き。そんな人生でいいよ。  それで、やっと思いついたんだ。クラスのみんなを次々に刺していこうって。別に何の恨みもない。ちょっと気に食わないやつがいるだけ。ほんと誰でもいいんだ。わたしがラクに殺すことがさえできればね。  包丁で首元をサッと切りつけたら、どんな感じがするんだろう。ワクワクするのかな。血がドピャーって噴き出すのかな。R指定の映画を見るたびに思うんだけど、あれってただの演出だよね。実際はあそこまで血が噴き出すことなんかないよね。  時間帯はいつにしようかな。教室で授業しているときにしよう。例えば、数学のときとか。別にいつでもいいけど。  授業中だから、みんなは黒板の方を見ている。何の前触れもなく、わたしはリュックから包丁を出して、前に座っているやつの首をぶった切る。  血がタラタラ流れて、みんなが「ブワー」って悲鳴を上げる。わたしは目についたやつから首を切っていく。助けて。やめて。逃げ惑うみんな。壮観だよね。まあ、突然すぎて悲鳴を上げる余裕なんかないか。  何人か刺しているうちに、先生が止めに入ってくるかもしれないなあ。そしたら、先生も殺しちゃえばいいだけだし。  坂上みたいなやつだったら、わたしが殺したとしてもむしろ感謝されそう。ほんとああいう分かりやすいクズを殺したら、立派な社会貢献だよね。少女にレイプしてるんだよ。救いようないじゃん。生きてちゃダメじゃん。  というのは、あくまでも架空の話だけど。  ほんとわたしの席から遠い人はラッキーだよね。それだけで生存確率が上がるんだから。逆に席替えがあって、わたしの前に座るようになった人がいたら、不幸としか言いようがないよね。殺されるために登校しているようなもんだから。  まあ誰が死んだって別にいい。大事なのは人数だ。ナオちゃんは一人しか殺せなかった。でも、わたしは五人くらい殺してやる。そしたら、ナオちゃんも喜んでくれそうだし、掲示板のみんなもわたしを称えてくれる。  これだけじゃ、まだ異常な感じがしないなあ。そうだ。殺人シーンをスマホで配信しよう。制服のポケットにスマホ入れて撮影するの。カメラに飛び血がついて、画面真っ暗になるかも。それは冗談だけど、みんなにわたしの勇士を見てもらおう。  クラスメイトを殺してみた。いいタイトルでしょ。JKの殺人配信。同時接続で二十人くらいは視聴してくれるかも。あの掲示板、それくらいは利用者いるでしょ。  明日、ズル休みしてホームセンターで包丁を何本か買っておこうかな。でもなあ、割と包丁で人を切るの大変っていうしなあ。どっかで練習しておきたいなあ。誰か切られてくれる人いるかな。ナオちゃんみたいに都合のいい友達がいたら、その子を殺していると思うんだよね。  ゴミ親を練習台にするか。いやいや、ゴミ親には一生をかけて罪を償ってもらわないと。クラスメイトを惨殺した少女の両親としてね。  わたしを産んでわたしの人生をめちゃめちゃにしたんだから、死ぬまで責任を持ってよね。
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