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VI
「ちょっと待ってくれ、軌道エレベーターのステーションまでミサイルが……」
「どうかすると今のICBMだと、軌道高度の倍以上はロフテッド軌道をとれば届く。だいたいこれで話は通じたと思う。これからもっと情況は酷くなる、逃げたいんだ、地上へ」
なら、自分たちだけ宇宙船で降下すればいいじゃないか。
「わかってないな、ドク」とトマス。
「この船内は国際法上、どこの所属だ?」
「日本だが──」
「そう、日本だ。我々は日本に亡命したい。手土産に米国のスカイラブで記録された実験記録や宇宙に関するさまざまな観測記録を日本の研究機関に差し出す準備ができている」
とトマスが事情を説明した。
「だから、宇宙船に乗って、一緒に帰還して欲しいんだ。ドクにはその証言をお願いしたい」
それでさっきの……。
「まだまだ降下位置には着けない、着いたらその後、宇宙船は日本の種子島宇宙センターの沖を目指して降下、着水する。そこで正式に日本政府に亡命の意志を告げる」
カミンスキーが話を続けた。
「中国の天宮IVは懸念されたように、ただの宇宙ステーションではなく武装していることも発覚したんだよ。すでに人工衛星が破壊されている。それだけじゃない、中国はその宇宙戦でおびただしい数のスペース・デブリで地球の静止軌道を汚染するだろう。このままだと、『ねがい』や『スカイラブ』にも近づかれ、殺されてしまう」
トマスが航行システムのモニターを眺めている。
「これはスカイラブで計算したもっとも早い日本へのルート設定なんだ、ドク」
──ヴァチカンからのリークとその後はわかったが、なんでおれがいつの間にか博士になっているんだ?
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