II

3/3
前へ
/14ページ
次へ
 医者だかAIだかが話かけてくる。医師だった。  ああ、気持ち悪い、と蓮。  「そのアイウェアの左側はデータを投影できる。漫画やアニメでいうところの『スカウター』みたいと言えば通じるだろう。起動はそう、そのスカウターを起動する、と『思考』すればいい」    蓮はスカウターも知らなかったがデータ投影を起動させるのは簡単にできた。医者の名前などのデータがアイウェアに投影される。  すると、左眼には蓮の改造された身体のデータを集めて、「麻酔後の気分の悪さがありますか?」と表示される。「Y/N」のYに視点を合わせると麻酔後の気分の悪さは次第に鎮まっていった。    これで俺も機械改造者(メカノ)なんだな、と思うと蓮は微笑んだ。同時に、有機生体派(オルガ)たちの派閥(クラスター)を警戒しないといけない。  世界はカトリックと、資本主義と社会主義をミックスしたような経済体制をしく勢力、通称CS(シーズ)に二分されている。言葉遊び的にCS(シーズ)は「種」を連想させ、さらに種からの発想により、現在では撒種主義(ディセミナシオニスム)と呼ばれている。  日本でも、その派閥(クラスター)争いは存在し、互いが互いを敵視している。    そして蓮とは協議離婚した。蓮にはもう執着などなく、宇宙ステーションへ行くことどころか、数年前に訪れた、ケープ・カナベラルの廃棄されたロケット発射複合体(コンプレックス)群へまた行けることだけが夢だった。    例外は杉田美都の存在だけ──。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加