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IV
ケープ・カナベラル空軍基地アポロ第34発射複合体でのインタビューから四年後……杉田美都は呆れていた。と同時に大木戸蓮の昔の言葉どおり、態度にぶれがないのを、なにか誇らしくさえ思っていた。
宇宙でも少子化改善の実験を数回繰り返したのはいいのだが、日本宇宙開発機構は国際宇宙ステーション「きぼう」の建造や打ち上げの見直しをすることとなった。
さらに、すでに稼働している宇宙ステーション「ねがい」も存続が危なくなり、とりあえずは一旦乗員を回収することに。
「今生の別れね……それにあなたは『ねがい』の中で死んでしまうわ、それでもここから生と死が等価値みたいなことをSNSなんかに発信するのでしょ?」
ああ、と「ねがい」に到着したときのショートカットよりだいぶ伸びた髪の美都を見つめながら、蓮。
「言ったろう、ケープ・カナベラルの空軍基地アポロ第34発射複合体がすべての始まりであり終わりであり、人類にとっての『宇宙』とはああいったメリット島に放棄された発射複合体なんだ」
そして、美都と同じ有機生体派の小出、新宮は、あからさまに機械改造者の蓮に軽蔑の視線を送っていた。
彼ら二人はすでに「ねがい」にドッキングさせてあった宇宙船に乗り込んでいる。エアロックには美都と蓮。
美都は蓮の頬にキスをして、身体をひねって宇宙船に搭乗した。
じっと見つめる美都を見つめ返す隙もなく、宇宙船のハッチが閉まる。蓮がエアロックから「ねがい」の管制モジュールに浮かんだまま移動すると、モニターに宇宙船の射出を許可してください、のメッセージが点滅している。
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