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いつもニコニコ オメガのヒカル
いつもニコニコのヒカルくん。
それが俺、志久陽太郎の恋人、保本ヒカルのあだ名だ。
ヒカルと俺とは恋人であり幼馴染であり、そしてアルファとオメガという関係でもある。
このアルファとかオメガってのは、男女とはまた違う第2の性とかいうやつで、α(アルファ)・β(ベータ)・Ω(オメガ)の3つがある。
強く賢いエリートのアルファ。つまり俺。そして凡人のベータ。人口のほとんどがこれ。最後に弱々だけど男でも妊娠できるっていうのがオメガだ。
オメガとアルファは惹かれ合う。
これはもう今や常識的なもんで、オメガはアルファと番うために生きてて、アルファを誘うためだけにもの凄いフェロモンまで垂れ流す。
それこそ花の匂いに誘われる虫のごとく、アルファがその匂いに引き寄せられるってわけ。
そんな感じでまあ俺とヒカルも引き寄せられたまま離れることなく、中学から高校へと進学するのと並行して幼馴染から恋人へと発展していった。
ヒカルの家は、誰の目から見ても超がつくほどのど貧乏で、漫画にでも出てきそうなくらい古くてボロい木造のアパートに住んでいる。
父親は今にも潰れそうな小さな町工場に勤務していて、母親は昼は近くのスーパーでパート勤務、夜は小汚いスナックでアルバイトと、絵に描いたような下層階級の貧しい家。そしてそんなベータの両親のもとに生まれたヒカルは、頭もたいして良くはなく、幼稚園の頃からずっと公立に通ってる。
対して俺はというと、両親ともにアルファで志久財閥当主の次男という、文武両道で眉目秀麗のサラブレッドなエリートアルファの1人。まあいわゆるイケメンでカッコよくてスポーツ万能、さらには頭もいい将来有望な俺ってことなんだけど、ヒカルと違って学校も有名私立幼稚園から始まり、今は名家の子息令嬢が通う有名私立高校っていう、順風満帆なエリートコース。当然、家でも外でも当たり前のようにちやほやされて生きてきた。
財閥は同じアルファの兄貴が継ぐとして、それでもいつかはグループ企業の1つを任される予定だし、将来はまあ確実に安泰。
この暗い不景気な世の中で勝ち組の俺は、悠々自適な人生が生まれたときから保証されていた。
そんなカリスマエリートな俺と超貧乏なヒカルが出会ったのは、まだ2人が小学生の時。
それは俺の家近くにある公園でのことだった。
その日俺は家族でいつも行くフレンチのレストランへディナーに行った帰りで、車の後部座席に座り、片手にお土産にと貰ったお菓子を握りしめていた。
レストランを出たのはたぶん20時を回っていたくらいだったと思う。21時から観たいテレビがあったから、早く帰りたかったのを覚えてる。
レストランの前庭は上品な淡い光でライトアップされてて、みんなそれを見るためにゆっくり歩いてて、でも俺はそんなものよりテレビが観たかったから、親を急かしたんだ。
車は店を出ると繁華街を抜け、住宅地の暗い生活道路に入った。俺は菓子を食べながら、外を見てて、テレビ間に合うかなって思いながら、流れるようにすぎていく見慣れた家々を見つめてた。
そろそろ家だなってなって、近くの公園にさしかかった時、子供がブランコに乗っているのが見えた。
暗がりにブランコに乗ってる子供ってちょっと怖くね?
暗がりの中外灯に照らされて幽霊みたいでちょっと怖かったんだけど、その時母さんが親父に何気なく言った言葉が、俺にその子供へ強い興味を抱かせることになった。
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