エリート（？）アルファな陽太郎くんの災難

いつもニコニコ オメガのヒカル

「なあ、ヨウちんのカノジョのヒカルちゃん、めっちゃかわいいよな」
「わかる〜！　オメガってどれもあんなかわいいの？　ちっちゃくってさ、華奢でさ〜。顔も雰囲気もなんだか妖精さんってカンジでさ〜。その辺の女子なんかより全然かわいい。アイドルも目じゃねえよ」

　学校の休み時間にみんなが互いの彼女の話をしていて、そこでヒカルの話が出た。
　もちろんみんなは、ヒカルが男子であることを知っている上でのこのセリフだ。

　俺が通っている高校は、有名企業の御曹司やら芸能人の子供やら、政治家の子供やらいわゆる名家のご子息ってのが多いから、アルファで特別エリートな俺でも気兼ねなく付き合えるヤツが多い。

　まあもちろんアルファ性ってのは、オメガに続いて希少だからいくら名家の子息揃いといえど、この学校にはアルファは少数しかいない。ほとんどがベータで、それなりに賢くないと入学できない学校だから、頭の弱いオメガはこの学校にはいない。

　もしかすると思春期のアルファとオメガを一緒にすると問題が起きやすいってのもあるから、わざと学校側が入学させないようにしてんのかもしんないけど。

　そもそも希少なオメガはその辺を歩いていたりはしない。

　昔はそれでもそれなりにいて、アルファのほうが希少だって言われてた時代もあったみたいだけど、今ではオメガは50万人、いや60万人？　に1人とか言われてるし、とくに最近では昔は多かった両親ともにベータの一般家庭に、オメガが生まれなくなっている。

　ちなみに中流でもなくど貧乏な下流家庭の生まれで、かつ公立に通ってるヒカルはとても珍しい存在だったりする。

　とまあそんな感じだからベータのヤツにとって、オメガはかなり珍しい存在だ。
　ベータのこいつらはオメガを見たことがないっていうもんだから、この間デートの最中に落ち合ってヒカルを紹介したってワケ。

　デートの最中いきなり現れたこいつらに、最初はヒカルもびっくりしてたけど、すぐにいつものニコニコのヒカルに戻って挨拶してた。みんなに可愛いかわいいって言われて、ヒカルもまんざらでもなさそうにしてた。

　だから最初の予定では映画行くことにしてたけどまあいっかなってデートは中止にして、その後もそいつらとカラオケ行ったり、街をぶらいついたりしてたんだけど、ニコニコのヒカルは文句も言わず、その日は最後こいつらと飯食って終わった。

　後でそのことクラスの女子に言ったら「ナニソレ信じらんない〜！」って言ってたけど、ヒカルはニコニコしてたんだからいいだろ。

　それにこいつらは俺のおかげで念願のオメガとの対面を果たしたんだし、俺は友達をヒカルに紹介できたし一石二鳥ってやつ。

　でもヒカルが可愛いって話には異議ありだ。

「ヒカルが可愛いって？　お前ら他のオメガを見たことがないからそういうんだよ。ちゃんとした家のオメガはさ、もっとこう上品で儚い感じで、その辺のモデルなんかよりずっと綺麗でさ〜。ヒカルとは全然違うんだっての」

　そう、アルファを要しているような家、特に資産家や政治家の一族だったりとかは、将来のことも考えてアルファだけじゃなくオメガの子供も要している。上流の家ってのにはどういうカラクリなのかは分からないけど、アルファだけじゃなく希少って言われているオメガもそれなりに生まれていたりする。

　だから上流社会の社交場ってとこにいけば、オメガには会えるんだけどさ。そこで会えるオメガってのはもう、ヒカルとはもう全然違う！

　身なりがいいっていうのもあるんだけど、やっぱり上品さとか美しさとかがもう段違い。