いつもニコニコ オメガのヒカル

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 しまった。俺としたことが漫画でよく見る負け犬の遠吠えみたいなことを言ってしまった。  だが宮前はそんなこと気にもせず、何かを言うこともなく、そのまま階段を上っていってしまった。   (あいつちょっと笑ってた)    なんだかもうすげー恥ずかしくなって、なんかもうあいつの息がかかった首とかもうなんか熱いし、よくわかんないけどイライラした俺はドタドタと音を立てて階段を降りていった。    その日の夜、俺はなんだか今日の宮前のことが頭から離れなくて、全然寝付けず、俺はベッドをゴロゴロ転がってた。  明日は土曜日で、ヒカルと卒業前の旅行に行く予定で朝早くに出ようって言ってたのに。    考えれば考えるほどなんだか恥ずかしくなって、ひとり悶えてた。当然翌日は寝坊。  起きたのは、ヒカルとの待ち合わせ時間から40分くらい過ぎた頃だった。    スマホにかけても出ないのを心配してヒカルがウチに来たって、お手伝いさんが言いに来てくれてそこで起きた。    手に持ったスマホを確認すると、ヒカルからの着信が15分おきに2回と、メッセージが2通。最後のメッセージは『心配だから、これからおうちに行くね』だった。    でもまだ頭は眠くてだるい。   (行かねーって言ったら泣くかな。いや泣かないな。きっとニコニコしてるだろ。ヒカルだし)    でも旅行の用意はできてるし、韓国行きの飛行機のチケットも取ってある。それに一泊するつもりで一応あっちのホテルもとったんだぜ? ヒカルはヒートがまだだからさ、俺たちまだエッチなことしてないんだけど、そろそろいいだろっていう意味で。一泊だって伝えてあるから、ヒカルもそのつもりだろうし。やっぱ行かねーってのはなあ。    のろのろ起きて、ふわ〜ってあくびしながらパジャマのまま玄関行くと、玄関ホールにコートを着たヒカルが俯いて立ってた。   「わりぃヒカル。寝坊した。飛行機遅らせていい?」    そう言うとヒカルはちょっと泣きそうな顔だったけど、すぐにニコッて笑った。  ほら。ヒカルは笑うんだ。   「う、うんいいよ! 俺、ここで待ってるし!」    えへへと笑うヒカル。  怒ればいいのに。悪いのは俺なんだけど、やっぱりちょいムカつく。  なんだろーな。なんだかちょっと壁があるように感じるんだよな。    ヒカルのことは好きだけど、こんなんで結婚してずっと一緒で本当にうまくやっていけるんだろうかって、思っちまう。    俺ってこう見えて、浮気とかしないタイプ。エッチなことだって、ヒカルがまだヒートがきてないからって嫌がるから、キスだけで我慢してる。俺だって本当はセックスしたいよ。    ベータの友達は俺より遊んでて、一緒に夜の街に繰り出してクラブ行ったりナンパしたりはするけど、俺はそこまで。親父にも会社の迷惑になるような遊びは絶対するなって、キツく言われてるしさ。    でも本当ならさ、もっとこう色んな人と付き合ってさ、経験してから結婚相手を選ぶべきなんだよな。   (宮前ですら、あの斗貴哉様との結婚を遅らせてるし)    まあ悩むよなぁ。俺たちアルファって、家やらなんやらしがらみがあって、意外と選択肢なかったりするんだよな。  斗貴哉様と結婚する宮前ですら悩むんだから、俺が悩むのは当然か。   「じゃ、俺着替えてくっから」 「うん!」    俺は2階の衣装部屋にいくため、階段を上がっていきながらチラッとホールを見下ろすと、ヒカルはいつものニコニコ顔で見送っていた。  
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