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エレインはレナードとしばらく抱き合っていたが。
やはり、気まずくなったのか彼はエレインをやんわりと離した。
「……す、すまない」
「わ、私は!」
「いや、みなまで言うな。エレイン」
レナードは顔を赤く染めながらも言う。エレインは驚きを隠せない。
「その、私は嫌じゃなかったわ」
「え?」
「ナードは嫌だったの?」
エレインが逆に聞き返すと、レナードはさらに動揺する。
「い、いや!そんな事は!」
「嫌じゃなかったのね、なら。私は婚約者のままでいいのかしら」
「……別に、レンが婚約者で嫌だとは思っていない。むしろ、君が心配で仕方ないんだ」
やはり、あのオリビアの言った通りだ。全く、レナードは自身を嫌っていない。むしろ、大事に思ってくれている。それが分かり、くすぐったい気持ちになった。
「……ナード、私はあなたを誤解していたみたいね」
「そうなのか?」
「ええ、今になってそれが分かったわ。あなたは私をずっと心配してくれていたのに」
エレインが笑うと、余計にレナードは顔を赤らめる。けれど、目線は逸らさない。じっと見つめられた。
「レン、そろそろ帰ろう」
「……分かった」
頷くと、レナードは手を差し伸べてくる。エレインは自身のを重ねた。キュッと握られて軽く驚くが。嫌がらずに、歩き出す彼に付いて行った。
馬車の時もレナードは先に乗り、エレインを手助けしてくれた。中に入ると、扉が閉められる。何故か、エレインが御者側に座ると彼も隣に来たが。
「……レン、その。今まで悪かった」
「それは何に対しての謝罪か、訊いてもいい?」
「いや、君にはずっと素っ気なくしていたから。けど、君が他の男に盗られるのは嫌で」
エレインはレナードの本音を聞いて顔に熱が集まるのが分かった。まさか、彼がそんな事を考えていたとは。意外過ぎるというか。
「それはその、私もね。リア様に言われたわ。いつも、めそめそしていないで。シャキッとしなさいって」
「そうか、確かに。オリビア嬢の言う通りではあるな」
「うん、だから。ナードの本音が分かって嬉しくはあるの」
二人して、顔を赤らめて。エレインは俯く。レナードはそっと彼女の肩に腕を回す。あまりの急接近にエレインは内心で慌てふためいた。けど、顔には出さない。
「……レン、その。早く婚姻ができるように両親に掛け合ってみるよ」
「えっ?!」
「いや、俺の理性がもちそうにないし」
そう言われて、エレインは固まった。レナード、理性って?!
内心で悲鳴をあげる。やはり、そういう事だろうが。
「あ、すまない。今のは気にしないでくれ」
「う、うん」
エレインは穴があったら入りたくなる。あまりの気恥ずかしさに、顔を上げられない。レナードはそれでも肩に回した腕を離さなかった。
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