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5
湯浴みを済ませると、エレインは脱衣場にいた。
ベティや二人のメイド達が髪の水気をタオルで丁寧に拭き取る。体も同様にだが。
それらが終わると、夜着用のネグリジェを着させた。
「お嬢様、夕食はどうしますか?」
「そうね、もう休むわ」
「分かりました、果実水だけでも用意しておきますね」
ベティは頷くと、ネグリジェに着替えたエレインやメイド達と一緒に脱衣場を出た。
エレインが寝室に行くと、ベティは急いで厨房へ向かう。果実水をもらいにだ。厨房へ速歩きで行くと、二人のメイドも何故か付いて来た。
「……どうしたの、マリアにミリア」
「だって、お嬢様が休まれたら。やる事がないじゃない」
「そうよ、厨房に行ったら。ちょっとだけ、お菓子がもらいたいしね!」
先にマリアが後にミリアが答える。二人は似ていないが、双子だ。ベティより、三つ程上だが。
「分かった、行きましょう」
「「やった!!」」
マリアとミリアは喜んだ。ベティは仕方ないとため息をついた。
厨房に行き、ベティは果実水を料理人に頼んだ。若い男性だが、名をパルスという。
「……ベティさん、いつものでいいですか?」
「はい、お願いします」
パルスは慣れた手つきでレモンや絞り器を用意する。ナイフでレモンの半分を輪切りにした。残りを絞り器に載せ、ぐりぐりと動かす。中心から、果汁が周りの溝に溜まっていく。次に煮沸した水が入った瓶(かめ)がある場所まで行き、あらかじめ持っていたボウルに並々と注いだ。それを持って戻ってくる。ボウルに先程、絞ったレモンの果汁を入れた。蜂蜜も入れたら、混ぜる。泡立て器でだが。一通りできたら、パルスは輪切りにしたレモンを入れる。食器棚から出した水差しにそれを注いでいく。満杯になったら、トレーを持って来たベティに渡す。
「できましたよ」
「ありがとうございます」
受け取ると、トレーに載せた。パルスお手製の果実水はエレインに好評だ。両親にもだが。ベティはトレーを持ち直して厨房を後にした。
エレインの部屋に戻ると、寝室を軽くノックする。返答があったので開けて入った。エレインはベッドの端に座り、読書をしていたらしい。膝に小説らしき本を乗せ、こちらを向いている。
「……ベティ、果実水をもらってきてくれたの?」
「はい、いつも頼んでいるパルスさん手製ですよ」
「あら、パルスがね。彼が作った果実水やお菓子は凄く美味しいのよねえ」
エレインはふふふと笑う。確かにとベティも頷いた。
「では、こちらに置いておきますね」
「ありがとう、助かるわ」
「おやすみなさいませ」
ベティが言うと、エレインは頷いた。
「ベティもおやすみなさい」
「……はい」
ベティは浅くお辞儀をした。そして、寝室を後にしたのだった。
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