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 湯浴みを済ませると、エレインは脱衣場にいた。  ベティや二人のメイド達が髪の水気をタオルで丁寧に拭き取る。体も同様にだが。  それらが終わると、夜着用のネグリジェを着させた。 「お嬢様、夕食はどうしますか?」 「そうね、もう休むわ」 「分かりました、果実水だけでも用意しておきますね」  ベティは頷くと、ネグリジェに着替えたエレインやメイド達と一緒に脱衣場を出た。  エレインが寝室に行くと、ベティは急いで厨房へ向かう。果実水をもらいにだ。厨房へ速歩きで行くと、二人のメイドも何故か付いて来た。 「……どうしたの、マリアにミリア」 「だって、お嬢様が休まれたら。やる事がないじゃない」 「そうよ、厨房に行ったら。ちょっとだけ、お菓子がもらいたいしね!」  先にマリアが後にミリアが答える。二人は似ていないが、双子だ。ベティより、三つ程上だが。 「分かった、行きましょう」 「「やった!!」」  マリアとミリアは喜んだ。ベティは仕方ないとため息をついた。  厨房に行き、ベティは果実水を料理人に頼んだ。若い男性だが、名をパルスという。 「……ベティさん、いつものでいいですか?」 「はい、お願いします」  パルスは慣れた手つきでレモンや絞り器を用意する。ナイフでレモンの半分を輪切りにした。残りを絞り器に載せ、ぐりぐりと動かす。中心から、果汁が周りの溝に溜まっていく。次に煮沸した水が入った瓶(かめ)がある場所まで行き、あらかじめ持っていたボウルに並々と注いだ。それを持って戻ってくる。ボウルに先程、絞ったレモンの果汁を入れた。蜂蜜も入れたら、混ぜる。泡立て器でだが。一通りできたら、パルスは輪切りにしたレモンを入れる。食器棚から出した水差しにそれを注いでいく。満杯になったら、トレーを持って来たベティに渡す。 「できましたよ」  「ありがとうございます」  受け取ると、トレーに載せた。パルスお手製の果実水はエレインに好評だ。両親にもだが。ベティはトレーを持ち直して厨房を後にした。  エレインの部屋に戻ると、寝室を軽くノックする。返答があったので開けて入った。エレインはベッドの端に座り、読書をしていたらしい。膝に小説らしき本を乗せ、こちらを向いている。 「……ベティ、果実水をもらってきてくれたの?」 「はい、いつも頼んでいるパルスさん手製ですよ」 「あら、パルスがね。彼が作った果実水やお菓子は凄く美味しいのよねえ」  エレインはふふふと笑う。確かにとベティも頷いた。 「では、こちらに置いておきますね」 「ありがとう、助かるわ」 「おやすみなさいませ」  ベティが言うと、エレインは頷いた。 「ベティもおやすみなさい」 「……はい」  ベティは浅くお辞儀をした。そして、寝室を後にしたのだった。
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