何が忘れられたのか

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 テルガド共和国。  アフリカの東海岸にある、人口2600万人の国。  鉱物資源が豊富で、特にダイヤモンドは主要産業といっていい。  だが、それらの利益が国民に公平に配られてはいない。  極端な格差社会だけが生まれ、改善されない経済は世界で最も貧しい国を作りだした。  結果、鉱物資源をめぐって国内は内戦状態に陥った。  何年にもわたる、国連などの機関からの介入もあった。  現在はそのかいあって、戦乱は収まりつつある。  これは、そうなるかどうかわからなかった、とても不安定だった頃の物語。  深い森だ。  上を見上げても、空の青さや太陽より、木々の葉のほうが多い。  赤道近くの強烈な太陽を受けて、育った熱帯雨林だ。  その中を走る、細い舗装道路。  急な山に刻まれている。  黒いアスファルトはところどころひび割れ、また崩れた山に飲み込まれかけている。  そこを駆け抜ける、5台の車列がある。  前後の4台は、深緑に塗装された、全長も身長も4メートルほどの人型ロボット。  セカンド・ボンボニエールという。  人型、といっても、その足は4本だ。  人間と同じような足が2本。
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