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プロローグ
図書室は昼休みなのにも関わらず薄暗い。奥の本棚に隠れて膝を抱える詩歩は、遠くの廊下から聞こえてくる足音や笑い声に怯えていた。
パタパタと図書室に近づいてくる足音が聞こえてきたかと思うと、ドアの開く音がしてから怒った顔の友人が詩歩の前に来た。
「あー、またここにいた!私も先輩たちに怒られるんだからね」
「ご、ごめん」
小声で怒る友人に怯えながら、逃げ出すのを諦めた詩歩は立ち上がった。そして、涙を堪えながら友人に謝る。
「悪いと思ってるなら、最初から部活に参加してよね。コンクールも近づいてるんだからさぁ」
詩歩は怖くて、呆れて話す友人の顔を見ることができなかった。
「ほら、昼練が終わっちゃうでしょ。行くよ」
俯く詩歩の腕を友人は強引に掴み引っ張る。
「……うん」
半ば引きずられるように歩き出した詩歩は、返事をしながらもう逃げ出すのをやめようと考えていた。
赤坂詩歩の入学した中学校は合唱に力を入れている。近所の高校が合唱の強豪校だからだ。お互いの音楽担当教師の仲が良いため、中学校でも合唱部を作ろうという話になった。そして、地方コンクールで金賞を取ることも増えた。
詩歩は淡々と昼休みや放課後の夜遅くまでを練習に費やす友人たちが怖くなり、部活から逃げ出すようになったのだ。
部活から逃げ出さなくなった詩歩は、友人たちが歌う無機質な感じの声に押し潰されそうになるのを我慢しながら練習に参加した。夏休みが過ぎた頃の詩歩は、自分が楽しむためではなく合唱部のコンクールのために歌うようになっていた。
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