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九月の体育祭と衣替えが終わって、落ち着いてきた教室でも詩歩の周りだけは変わらない。体育祭という盛り上がる行事が終わった代わりに、詩歩のいじめを面白がる男子も増えていた。
「瀬川と辿真に、完全に見捨てられたな」
一人の男子が落書きされた詩歩の机の写真をスマホで撮影しながら言う。スマホは持ち込み禁止になっているが、持ち込んでいる生徒は少なくない。
「そういや、瀬川もだけど辿真の奴さ、最近放課後はすぐどっか行くよな。あいつ、何部だっけ?」
詩歩をいじめている生徒を見て面白がっていた男子は、思い出したように空いてる辿真の席に目を向ける。
「あー、確かに。あいつ、ノリ悪くなったよな。部活は俺と同じ卓球部のはずだけど、顔出してないよ」
「やよいもすぐ帰っちゃうよね」
辿真の話題に一人の男子が答えると、女子も教室にいないやよいの話題を出す。
「二人は幼なじみだから、きっと一緒にいたりして」
「ありえる!」
生徒は二人の話題で盛り上がり始める。
しかし、千春はつまらなさそうな顔をしている。
「あいつらなんて、放っといて良いじゃん」
「……そうだね」
話題を遮られた他の生徒は気まずくなって賛同する。
一時期、やよいと辿真の雰囲気に心を許していた詩歩は、もう一人が良いと心を閉ざした。
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