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12 部屋割り
「さて、そんじゃそろそろ移動すっか」
ルギがキリエに衛士たちの捜索の結果を報告に行った頃、トーヤは腹ごしらえを済ませ、一休みして体力を回復させるとそう言った。
「移動ってどこにさ」
「ん~、まあ、いくつか考えたんだけどな、あそこがよさげかなってとこがあるからそっちに行くぞ」
「ちょ、待てよ荷物!」
ベルが急いで自分の荷物を抱え、シャンタルも同じようにしてトーヤの後について行く。
「なあ、これって宮への上りじゃねえの?」
トーヤが自分が来た方向、海へとつながる出口への反対方向へ向かって歩き続けるのにベルがそう聞いた。
「ああ、そうだ」
「どこ行く気だよ」
「まあ黙ってついて来いって」
「って、一本道なんだからここ行ったら宮行くしかねえじゃん!」
「いいから黙ってついて来いっての」
そう言われてベルは渋々、シャンタルは黙々とあとに続く。
「やっぱそうじゃん!」
「いいから静かにしてこっち来いって」
トーヤは聖なる湖側の出口から外へ出ると、右手の人差し指をしいっという風に口に当て、左手で2人を手招きした。
「な、なんなんだよおまえら!」
「よっ、ひさしぶり」
いきなり窓から部屋へ入ってきたトーヤたちに、さすがのアランが驚いてそう言った。
ここはシャンタル宮の前の宮にあるアラン、ディレン、ハリオが「客人」として滞在している客室である。トーヤは先日マユリアに会いに来た時と同じ道を辿り、堂々と前の宮へと侵入してきたのだ。
「やっぱここだったか。あそこで見た時になんか見たことある部屋だと思ったんだよな。エリス様のお部屋の隣かよ、いい扱い受けてんな」
トーヤはそう言って、窓から続けてベルとシャンタルを招き入れた。
「兄貴ぃ!」
「じゃねえ!」
アランがそう言って飛びつこうとするベルをはたき落とした。
「なにすんだよ!」
「それは後だ、今は先に聞くことがある。何やってんだよトーヤ!」
アランはベルを横にどけてトーヤに正面から向かう。
「何って、結局は最後はここに来るわけじゃねえかよ。だったらもう来ておいたら、いつ交代になっても安心だろ?」
それはそうなのだが、それにしてもあまりに大胆だろう。アランは呆れて声も出ない。
「どうせ一月の間姿隠すんなら、じめっとした薄暗い洞窟や、衛士の目を盗んでリュセルスでこそこそするより、ここのが快適だろうが」
トーヤはそう言って、担いできた荷物をよっこらしょと足元に置くと、
「おお、久しぶりの座り心地」
と、ソファにどっかり座り、
「それより一人か? ディレンとハリオはどうした。この部屋の担当侍女はどこ行った」
と、ほんの少しだけ硬い声で聞いた。
「船長とハリオさんはちょっと船に帰ってる。もちろん衛士付きでな。そんで今日の昼の担当はアーダさんだが、俺がいいって言ったんで部屋に戻ってる。ミーヤさんは知らん」
最後の一言はちょっと冷たい言い方だったかなと思いつつ、アランはそう言った。
「そうか、そんじゃしばらくはゆっくりできるな。今の間にあっちの部屋に荷物運んどけ」
「分かった」
トーヤの言葉にシャンタルが、さも当然、何も考えていないように移動しようとするもので、
「おまえもちょっと待て」
と、アランが止める。
「ん、何か用事?」
「じゃなくてだな、おまえ、今どこに行こうとした」
「え、主寝室だけど」
と、これもまた、さも当然のようにシャンタルが答える。
「今はあそこは船長の部屋だ。一番の年長だしな」
「え~、そうなの?」
シャンタルはエリス様の時と同じように、自分が当然あそこの部屋だと思っていたようだ。
「どこでどう寝てんだよ、今」
「主寝室は船長、次がハリオさんで俺が侍女部屋に寝てる」
「そうか。じゃあ、誰がどこに寝るか決め直すぞ」
「待て」
アランが止める。
「なんだよ」
「後から入ってきて勝手に決めんな。俺が決める」
こう宣言されたらもう「隊長」の言うことを聞くしかない。
「しゃあねえなあ、じゃあよろしく頼むぜ、隊長」
トーヤが苦笑しながら譲歩する。
「トーヤに任せたら自分が快適な部屋割りにしそうだからな。けど、シャンタルはやっぱり一番見つかるわけにはいかねえから、主寝室だな」
「やった」
シャンタルが当たりを引いた人みたいにうれしそうに軽く拳を握った。
「そんで一番のお尋ね者のトーヤはシャンタルと一緒」
「おう」
トーヤも当たり、という風に親指を立てて見せた。
「なんかあったらすぐに2人で窓から逃げろよな」
「分かった」
「そして次に広い真ん中の部屋が船長とハリオさん、俺とベルが侍女部屋だ」
「えっ、ベルと離れちゃうじゃない」
エリス様の時と同じく、隣にベルが来ると思っていたシャンタルががっかりし、それでもまだ、
「ベルだってお尋ね者じゃない。だったら隣はアランとベルの方がよくない?」
そう提案するが、
「だめです」
と、アランに速攻却下された。
「とりあえずそういう部屋割りだ、とっととおまえら部屋に隠れろ。この部屋には担当侍女以外の人間は来ないと思うが、いつ誰が来るかは分からんからな。絶対に絶対に見つかるなよ。部屋から出るな!」
アランがそう言って3人を指定した部屋へと押し込んだ。
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