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ともくんは優しいから、あたしの両親が死んでいる事を知らないフリしている。あたしを家の中に閉じ込めている事にしてくれているのだ。
あたしは小さな優しい場所にいる。
それはあたし自身が望んでいることで、何不自由なく暮らしていける。不満は何1つない。
あたしは今日もこの部屋の中で守られているのだから。
「あたしは寧々っていうの。よろしく」
「……っ、」
その場にしゃがみ込む女の子に手を伸ばせば、肩をビクッと動かし結束バンドがつけられたままの手で振り払われた。
「そうだよね、怖いよね。ともくんの優しさはまだ分からないよね。でも安心して、大丈夫だから。貴女もそのうち理解できるから。ともくんはね、とっても心が広いの」
女の子の頬を潰して力のままに上に持ち上げて口元をほころばせれば、この子の泥で汚れた顔がみるみると歪んでいく。
ともくんは優しくて弱ってる子を放ってなんかおけないから、きっとこの子も守ってあげるのだろう。悔しいけど仲良くしなきゃ。
でも、もし、この子がともくんを侮辱したり、誘惑なんてしたら、あたしはまた人を殺しちゃうかもしれないけど。
ともくん、ともんく、ともくん、お願いだからあたしをずっと守ってね。
───クロノスタシスが解けるまで───
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