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私、救済者になっちゃった!?
「あれれぇ・・・。死ねると思ったのにぃ・・・。」
最後に耳に残った急ブレーキ音、それに合わせて目を瞑ると体が浮いた感覚に包まれた。
呟いた言葉と頬の液体は無かったことにして、辺りを見渡してみる。
来ていた制服とは大違いの黒い巫女服、手に持っているのはおそろいの色の幣。足元には魔法陣があって・・・
着物を着た村人っぽい人がいる。
陰陽師のような恰好をしている、光に輝く綺麗な髪と瞳の少年がくずおれているのもわかる。
「どういうことだ笑わらう!」
「この人間が守り神とでもいうのか!」
「育て親を騙すなんて!ありえないわ!」
「あっ・・・ああああ・・・」
・・・え、私何かしたのかな。
見ていたら、彼はいきなり殴られ出した。
聞くに堪えない罵詈雑言もセットである。・・・!?やば!
こんなかわいい少年をいじめるなんて気が狂っているとしか思えない。
やめましょうよ!と腕を広げて立とうとすると、ハッとしたようにその暴力行為と罵詈雑言は止んだ。
とりあえず、外に出ることも許可されて、こっそりついていった彼の家ことオンボロ小屋を覗いてみる。
土下座のポーズをしてぐすぐす泣いている姿が確認できた。
とても悲しいけれど、私にはどうにもできない。
・・・あ、作戦立てればいけるか?
考えるのも兼ねて背を向けると、あの子を庇った時にも揺れなかった幣が紙の擦れる音を立てた。
紙が頭上から降ってきたので、天啓ということにして読んでみよう。
「えっと、何々・・・敬具、明谷葵あかりやあおい様。貴女に自覚は無いでしょうが、」
貴女は特別な人間で、悪しきを祓える存在です。
その力をトラックという陳腐な物体で失くすには惜しいこと、この悪が蔓延る世界を浄化してもらいたいことをこの手紙で伝えるため転移させていただきました。
心配は無用です、我々がサポートいたしますので。
この世界の悪を祓い終わった暁には、元の世界に戻すか楽な生活をできるようにしますので、頑張っていただけないでしょうか。
と、いうわけで、まずはこの村の天才召喚士を仲間にしてください。
助けが欲しいときは手持ちに幣がありますので、そちらをお振りに。
いや、長いな・・・。紙の裏には神よりと赤い字でプリント・・・?してある。
仲間にするとか以前に、私この世界のこと何も知らないのだが。
住む場所も何も所有していないのだが。
「とりあえず・・・拠点が欲しいな~。」
転移しちゃった時点で十分不思議だったから、これは割と本気だった。
そして、当然のようにっていうと少し変かもしれないけど、幣は揺れて山の上に私を転移させた。
・・・いや語弊があった。、山の上の和風豪奢な館の入り口付近に落っことされた。お風呂トイレ(分かれてる)キッチン、部屋も当然のようにたくさんある。いけそうだ。
次の日、人目を忍んで村に訪れると、何かの力を借りたのか、彼の細い手で押されたはずなのに効果音がつきそうなほど吹っ飛ばされた。
「あっ、あんたのせいで私はっ、ひぐっ、この村からお、追い出されるんですよぉ!」
涙やらなんやらでぐしゃぐしゃの顔、どもった言葉、震えた腕。
・・・姿こそ全く違うものの、元の世界の弟を思い出してしまった。
「・・・そっかぁ・・・」
「何がそっかぁなんですか!!」
「それならさ、私と一緒に行かない?」
そう言うと、彼は涙に濡れた目をしばたたかせ、首をこてんと右に振った。
不審者っぽいかとも思うけど、私について行くことでどんな良いことがあるかも詳しく説明する。
「美味しいものいっぱい食べれて、楽しいとこもいっぱい行けるよ!・・・多分。ね、お願い!」
うーん、説得下手か私。自分でもこんな説明じゃ絶対着いて行かないって言うのに。
でも、彼はくすっと笑って、はいっと返事をした。続けて、ついて行きます、とも。
「え、本当に・・・?」
「だっ・・・だめ・・・なんですか・・・?」
「いいや!ありがとう、じゃ、家行こうか!」
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