5人が本棚に入れています
本棚に追加
えっ、と呟かれるのも束の間、一晩眠ったお家は今日も変わらず堂々と立っていた。
姫抱きにした少年を傷つけないように扉を乱雑に蹴り開け、とりあえずお風呂に入れ(入り方とかは一応知ってた)。
しばらくは出てこないと思うし、服探そうか。
・・・んー、見つからない。
未だに握っていて、あの子を持ち上げるときにすごく邪魔だった幣を少し見ると、「ヤア☆」とばかりにそれは揺れた。
「!?ちょちょちょっ、まっ・・・‼ぶっ・・・」
思わず叫びたくなったが、上から服が面白いくらい落ちてきて埋もれてしまったのだ。
しばらく後脱出には成功したが、この部屋に物はもう置けない。
あの子の身長と同じくらいの服を何着か引っ掴んで一階に降りると、タイミングよく扉から顔をのぞかせる。
「あの・・・」
「服持ってきたよ、着替えたらご飯食べよっか!」
昨日食べたご飯は、チートには付き物の冷蔵庫に入っていたものだ。
もっと言うと本棚の中にレシピ本もあるので、私くらいの器用さなら大体作れるだろうな。
少し後、さっきまで着ていた服と似たデザインのを着たあの子に、さっと座布団を差し出す。
なんとなく食べたくなったためそのあとオムライスも作った。
彼は初めて使うであろうスプーンを器用に(?)動かして、ヒマワリの種を詰め込んだハムスターの如くほっぺをふくらませて、美味しそうにオムライスを食べている。
一段落ついた隙を見計らって、今までずーっと聞いていなかった彼の名前をようやく聞くのだ。
「ねぇ、私は明谷葵あかりやあおい。君の名前は?年齢も聞いていい?」
「ええと・・・透間笑とおるまわらう、です。12歳・・・です。」
「そっかぁ、よろしくね。」
「あの・・・葵さん。」
「ん、なぁに?」
「呼んだだけ、です。」
「何それ、可愛い・・・」
布団を敷くのが大変そうだったのに加え、笑くんが1人が怖いと泣きだしそうに呟いたため、その日は同じ布団で一緒に寝ました。
最初のコメントを投稿しよう!