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蓮見の叫び声でスズメたちが一斉に飛び立った。小さな翼でどこまでも高く上がっていく。交差点に残されたのは僕たちだけ。
「みんなはたった三年しかないのに、私たちには無限にあるんだから幽霊ってお得よね」
「幽霊生活に馴染みすぎだ」
「言ってみれば一生青春よ」
「一生というより、永遠じゃないか?」
永遠なんてない、とよく言われる。
花は枯れるし、涙は止まる。朝には暗い顔をしていた彼らも放課後には楽しく駄弁っているはずだ。
そして青春真っ只中の彼らが一生一緒にいるかと言えば、その確率は非常に低い。それこそ運命と呼べるほどに。
「……まあいいか。暇だし」
だがそれは人間の話だ。僕たちには関係ない。
僕と彼女になら、永遠だってあるかもしれないよな。
交差点の真ん中で立ち尽くした僕の手に、蓮見の柔らかい手が触れた。どきりと無い心臓が跳ねる。
その手をおそるおそる握り返すと、彼女はにっこりと笑顔を見せた。
「これもちょっとした夢だったの」
「手を繋ぐのが?」
「それだけじゃないわ。川越くんって絵本は読まない?」
彼女の問いかけに「読んだことくらいはある」と返しながら、そういえばまだくん付けで呼ばれていることに気付く。しれっとこちらから呼び捨てにすれば、向こうも合わせてくれるだろうか。
口の中で一度練習する。
はすみ。
ダメだ、到底外に出せるような代物じゃない。呼び捨てですらこんな調子なのに名前呼びなんていつになることやら。
時間がいくらあっても足りなさそうだ。
「運命で結ばれた二人は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ」
言い終えてから少し間を空けて「別に信じてたわけじゃないけどね」と早口で付け加える彼女に、僕は思わず笑ってしまった。
(おしまい)
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