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「幽霊って、心残りがあるから化けて出るんだよな?」
「私もそれ聞いたことある」
「僕たちの心残りってなんだろ」
「私もそれ聞きたかったわ」
つまり蓮見もよくわかっていないらしい。
そりゃそうか。自分のやり残したことなんていちいち把握しているわけがない。人生のやることリストがあれば話は別だが。
そもそも心残りのない人生なんて楽しそうには思えない。
「行ってみたら何かわかるかもな」
事故現場には僕たちのすっぽり抜け落ちた記憶がまだ残っているかもしれない。それを拾えさえすれば何か掴めるような気がした。
根拠はないが確信はある。
なぜなら今も一歩ずつ交差点に近づくたび、胸の奥の鼓動が高鳴っていくのだ。心臓無いのに。
「わからなきゃいけないの?」
「え、いやそんなこともないけど」
蓮見に指摘されて、何が自分をここまで突き動かしているのかをふと考える。
答えはすぐに出た。
「……まあ、暇だし」
ただその一言に尽きる。
幽霊が人を驚かすのってやることなさすぎた結果なんじゃないか、と察した辺りで校門が見えてきた。
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