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「まったく! 情けないにも程があろう。プロポーズもせんと若いお嬢さんを囲いもののように扱いおってからに!」
「お父上の言う通りですよ、礼偉。お若いお嬢さんをまるで物のように扱うなど紳士のすることではございませんよ」
おっとりとした母親までがそう言うものだから、楊はさすがにバツの悪そうに頭を掻きながらタジタジとしてしまう。その時だった。黙って家族の様子を見ていた玉環が、恐れながらも話に割って入った。
「あの……ご両親様……! 礼偉さんは悪くないのです。私を好いてくださっているというお気持ちもうかがっておりました。ですが私が……本当に私のような何の取り柄もないような女が礼偉さんのお側に置いていただいていいものだろうかと……きちんとお返事を差し上げられずにいたのでございます」
ところどころ言葉に詰まりながらも一生懸命に楊を庇う玉環に、楊当人はもちろんのこと両親も驚いたように彼女を見つめてしまった。
「お嬢さん――ではあなたもこの愚息のことを嫌っているわけではないのですな?」
もしも嫌々ながら脅されて一緒に住まわせられているというのなら、こんなに失礼なことはないといった調子で両親が心配そうにしている。
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