運命で結ばれている?

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「僕達はきっと運命で結ばれているんだよ」  また?  幼なじみが、もう何度目になるのか分からない告白を始める。  小さな頃から一緒にいるからといって、それが運命だと決めつけないで欲しい。 「えー、幼なじみということ以外に、そう考える理由を三つ述べなさい」  わたしは試験官のように冷たく言い放つ。 「え?え?え?えーと、」  あたふたと戸惑うあいつ。 「三、二、一……」  わたしは無情にカウントを刻む。 「あ、あ、二人ともCoCo壱をこよなく愛しているということ、それと……」  慌てて答えるけど、 「ブ―!時間切れ!」  わたしは目を細めて終了を告げる。 「ええー時間が短すぎるよー」  あいつが情けない声を出す。  皆まで言わせる訳がないでしょう。 「一つしか言えない様じゃ、運命で結ばれているとは言えないわね」  わたしは両手でバツを作る。 「え!CoCo壱は合ってたの?」  あいつが眼を丸くする。 「うん、合ってた。でも、時間切れ」 「もう一度。もう一度、チャンスを!」  あいつが手を合わせて懇願する。 「仕方がないなー」  わたしは渋々承知する。 「よし」  ガッツポーズを作るあいつ。 「はい。じゃあ、さっさとやるわよ。よーい……」  わたしが面倒くさそうに言うと、 「僕達はきっと運命で結ばれているんだよ」  え、そこから?  わたしは思わずずっこけそうになる。 「あー、もういいから。後二つね。どうぞ」  わたしは手をひらひらと振って先を促す。 「えっと」  お、今度は切り替えが早いじゃないか。 「二人とも、天一をこよなく愛しているということ!」  どうだと言わんばかりに、言い切る。 「合ってるけど、食べる物ばっかじゃん!」  食べ物ばかり被せるところ、天一のこってりばりにくどいんだわ!  好きだけど。  あ、天一のこってりラーメンのことだからね。 「合ってるの!?」  あいつが驚きと喜びの声を挙げる。 「何?適当に言ってたわけ!」  わたしが責めるように言うと、 「あわわ、あわわ。あわわ、あわわ」  とアホの坂田の真似をする。 「そういうのいらないから」  わたしが如何にも白けたという態度を取ると、 「えー、吉本、好きじゃん」  と不服そうな顔をする。 「好きだけど!あんたの坂田は、およびじゃないの!」  思わずむきになって言い返す。 「あ、これ三つ目ね。吉本」  あいつは、どさくさにまぎれて申告する。 「ちょっとぉ、だんだんいい加減になってきてる」  わたしは不満の声を挙げる。 「て、言うか、全部、あんたがデートで連れていったところじゃん」 「それに、全然、運命を感じない!CoCo壱、天一、吉本……」  何だよ、少し期待していたわたしがバカだったよ。 「もう、失格!」  なぜだろう涙が零れそうになる。 「僕達はきっと運命で結ばれているんだよ」  また? 「なぜなら、僕は、君のことなら何でも分かっているから」  ふん、そんなの信じてやらない。わたしは、そっぽを向く。 「君は、またか、と思いながらも僕の告白をいつも待っている」  ドキッ、そんなことないし。 「はぐらかしながら、僕をからかうのが好き」  それは……正解!だって、面白いんだもん。 「嫌だと言っているけど、本当は僕が好き?」  し、知らない。 「結婚して下さい」  彼は、懐に忍ばせていたリングケースから指輪を取り出すと、わたしの左手の薬指にはめた。 「何?始めからそうすればいいじゃん……」    わたしはどぎまぎして頬を赤く染める。 「ストレートよりも変化球が好き」  彼はそう言うと、わたしを見てにっこりとほほ笑んだ。 「バカ」  わたしはそう言うと、彼の左頬にそっとキスをした。  あーあ、やっぱり運命なのかな。  おしまい
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