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第6話
街の人間だけでない、遠く砂漠の村からも人々はやってきた。
大通りを埋め尽くす人の歓声は砂漠の砂さえ震わせるほどだった。
選挙管理委員としてわたしは皆とヘリや四駆で村々を巡り、票を集めて回った。鍵の掛かった投票箱を抱えて貴重な人々の願いと希望とを受け取った。
開票結果が出た今、民衆は大統領府に押し寄せ拘置所をこじ開けようとしている。その熱意のダイナミズムは国連平和維持軍の精鋭を以てしても止められはしない。
この国の放送局だけではない、他国のメディアも多数混じっていた。
《新大統領にハミッシュ=マクギャリー、副大統領にアーサー=クーンツを指名!》
ニュースはプラーグで携帯を持つ者に洩れなくメールされた。
そして今、拘置所は大衆の手で押し開かれたのだ。
「ジョセリン、ジョセ! 通して……ジョセ!」
歓声、足音、拍手に次ぐ、また声。押し潰されそうになりながら、泳ぐように前に進んだ。そうしてやっとの思いで人々の向こうにジョセの茶色い髪を見つける。同じ茶色の髪をしたハミッシュが良く通る大声で人々に落ち着くように訴えていた。
一緒にいたクリフとも早々にはぐれてしまい、わたしは何とか出獄したレズリーと落ち合う。大男のレズリーにわたしは抱き上げられ、元からのヒゲが収監中に伸び放題になってしまったもじゃもじゃの顔で頬ずりされてから、恥ずかしいけれど肩車して貰った。
人に揉みくちゃにされながら、ハミッシュとジョセが手を取り合っているのが見えた。ハミッシュとジョセが将来を誓い合っているのはグループの皆が知っている。
アーサーの黒髪も、キャラハンの薄い金髪もあった。
民衆は囚われていた旧反政府ゲリラを残らず解放し、兵士たちから護るように取り囲んで外へと向かい出す。
どうか怪我人が出ませんようにと祈りつつレズリーに担がれたままでわたしも外に出た。恥ずかしくても、やっぱり世紀の瞬間は見たかった。
大通りに出ると兵士たちが待ち構えていた。でも手出しなんかできる筈もない。これだけの人々に収拾をつけられるのは、もはやハミッシュの言葉だけだろう。
まだ国際社会に認められてはいない新大統領ハミッシュ=マクギャリーは、街の放送局と他国のメディアのマイク、大観衆と兵の銃口に囲まれて口を開いた。
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