DVの果て

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DVの果て

 孝明は結局瞳の勤めをやめさせ、自分と瞳の住まいを実家の近くに借りてもらった。  孝明の家からの援助で瞳は専業主婦として家にいる事になった。  事のきっかけは、瞳が自分のエプロンを新調した事だった。  家で使う物だし、これなら買っても良いだろうと思った地味な単色の薄いピンクのエプロンだった。  孝明は帰宅するなり、 「誰にことわって、自分の物を買ってるんだ!」  と、怒鳴り、初めて、瞳に本格的な暴力をふるったのだった。  身体の小さい瞳の襟元を掴んで、リビングで振り回し、ソファの角で瞳は頭にけがを負った。その出血を見て、孝明は更に頭に血が上り、 「このくらいでケガするんじゃねぇよ!家具が汚れるだろ!」  と、瞳を蹴った。  それまで、さすがに本格的な暴力を振るわれたことの無かった瞳は、急にこれってDVだよね。と頭にDVという文字が思い浮かんだ。  その日の事は近くの実家に知れる事となり、さすがに無抵抗の妻に怪我を負わせた孝明が親に怒られた。  そうして、蹴られた後、下半身から少量の出血があった瞳が翌日病院に行くと、現在妊娠2か月で、蹴られたショックで流産の危険があるので入院するよう言われた。  元々、SEXの後いつも出血していたのだが、何もしていない時の出血は生理不順の瞳には何か不安なことを予感するものだったのだ。  その時は何とか赤ちゃんも持ちこたえて、瞳は小さい頃から、毎日毎日一緒にいた孝明と初めて離れて夜を過ごした。  まさしく、中学3年生の時の初めてのSEXから、本当に一日も欠かさず孝明は瞳の下半身に執着し、生理中でも構わずにSEXに耽っていたのだ。    入院中に、瞳は暴力を受けたときのDVという事についてよく考える時間ができた。孝明のSEXからも初めて解放され、SEXが嫌だった事にもようやく気付いた。常に合意という訳ではなかったからだ。  スマホでDVを調べると、何という事か、自分はもしかして、ずっと精神的、性的なDVを受けていたのではないかと気づいてしまった。  そして、昨日、ついに力による暴力まで受けたのだ。  気づいたからには、もう、孝明を以前のようには見られない。  でも、妊娠しているのだ。子供の為にも我慢しなければ。  そう覚悟をして、ようやく流産の危険が去ったのでと、退院させられた。なんでも、孝明が、家でも安静にさせるから、早く退院させてくれと医者に頼み込んだようだ。  だが、そんな訳はなかった。毎日、瞳とのSEXを日課にしていた孝明の性欲は、瞳が入院している間に高まり続け、退院して安静が必要な瞳をその夜にすぐに襲った。 「やめて!赤ちゃんが死んじゃう!」  そんな瞳の叫び声など無視して、瞳を抑えつけ、自分の屹立した物を瞳の中に無理やり入れる。前戯もなにもない非情なSEXだった。ただでさえ流産しかけていたのを安静をとらせるどころか無理やりのSEXだ。それもいつも通り、思い切り奥まで入れた。そうして子宮口に当たったと孝明が思ったその時、 「あ”・・あ”~・・・」  と、瞳が効いたことの無い声で叫んだ。孝明がその生暖かさに驚いて結合部を見ると、瞳が大出血をしている。流産してしまったのだ。 「ひっ」  孝明は驚いて瞳から自分のものを抜き、しかし果てる直前だったので抜いた拍子にドクンドクンと、白濁したものが、瞳の大出血の中に混ざった。  瞳は何とか立ち上がったが、その大出血を見ると 「アァ~~・・・・・」  と、叫びながら、キッチンに向かい、包丁を持ってまだ呆然と自分の出したものと、自分の子供のなれの果てになった大出血に尻もちをついている孝明を刺した。 『瞳が自分を刺すなんて・・・』 孝明の思考もそこで止まった。孝明はそのまま出血性のショックで亡くなった。  そこからは、冒頭のとおりである。警察病院に搬送された瞳は正気を取り戻さず、檻の中の精神科病棟に入れられたままだ。  しかし、担当医師たちは瞳が体を前後にゆすりながら話していることをしっかり聞いていた。 「ねぇ、ほら、パパですよ。パパとママは運命の赤い糸で結ばれているの。」 「小さい頃から、ずっと一緒にいたのよ。」  手の中の赤ちゃんに優しく話しかける瞳は元の状態には戻れないであろう程、瞳の精神はすっかり崩壊してしまっていた。  瞳は幸せな運命の二人のままで自分の中に閉じこもってしまったのだった。 【了】
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