人狼の村

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教会前の広場には、子どもたちや、赤ん坊をかかえた母親、体の不自由なお年寄りなどをのぞき、ほぼ全ての村人が集まっている。情報を出し合う中で、夜中にジョンがイザベルの家に入っていったと誰かが言い出し、他に手がかりもないまま、多数決により、ジョンの追放が決まってしまった。誰もジョンをかばおうとする者はいない。下手にかばえば、今度はその人に疑いの目が向けられてしまうのだ。 「マックス、だいじょうぶ?」 ぼくは群衆の中、青い顔でたたずんでいる幼馴染を見つけ、近寄って声をかけた。マックスはぼくと同い年でまだ十八だが、独立して食堂を経営しているしっかり者で、明るい金色の髪に、人好きのする笑顔のハンサムだ。亡くなったイザベルは彼の店で、ウェイトレスとして働いていた。彼女も美人で社交的な性格だったので、店はいつも楽しい会話と笑い声の絶えない、村人たちの憩いの場だった。 「ああ、セオ。なんだかまだ信じられないよ。イザベルがもうこの世にいないなんて」 ふだんは周りを気遣い、明るくふるまっているマックスも、さすがに同僚を失ったショックをかくしきれない様子だった。
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