【二】頭をレンジにして下さい。

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【二】頭をレンジにして下さい。

「はじめまして、君が梨野さんか」  到着した地下研究所で、私を出迎えたのは、白衣の青年だった。こちらもまたイケメンである。銀縁の眼鏡をしているが、隠しきれないイケメン臭が漂ってくる。もうやだ、帰りたい。 「早速だけど、三日後に、現地に行ってもらうことになるから、バトルスーツの調整をしたいんだ。コレなんだけど」  SPに囲まれた博士は、名乗るでもなく、隣のマネキンを指さした。  そこに飾られているバトルスーツは、昨日の朝のニュースでも見た。同じ物だ。  一見すると、黒いスーツとコートだ。明らかに男性用である。 「着ると、想像力で、サイズは自動的に自分の体に最適化されるから」  強引にそれを示されて、その後私は試着室に押し込まれた。黙々と着替えると、明らかに大きかったスーツとコートが私サイズに替わった。私はシルクハットを手に取りつつ、俯いた。しかしコレを着て、外に出たくない。失敗したコスプレイヤーみたいな状態を、晒したくない。 「まだ?」 「あ、はい」  しかし私は小心者なので外に出た。すると博士がじっと私を見た。 「サイズは丁度良くなったね。他に何か希望はある? 明日一日は訓練をするとしても、今日はできる範囲で君の希望を叶えるよ」  それを聞いて、私はハッとして声を上げた。 「あ、あの!」 「なにかな?」 「本当に希望を叶えてくれるんですか?」 「うん」  無表情で頷いた博士を見て、私は拳を握った。 「あの、頭をレンジとかにしていただけませんか?」 「ごめん、君が何を言っているのかよく分からないよ」  私は顔を隠したいと伝えたかったのだが、上手い表現が出てこなかった。博士が呆気にとられた顔をしている。 「レンジというのは、microwave ovenのこと? 電磁波を用いる加熱調理器の、あのレンジでいいの?」 「えっ、は、はい!」 「ふ、ふぅん。想像力レベルが高いと、発想も奇想天外なんだね。希望は叶えるよ」  博士は若干ひいている様子だったが、深く突っ込んではこなかった。  代わりに周囲に何やら指示を出した。 「じゃあ完成するまで、僕は作業をしてくるから、梨野さんは訓練をしていて」 「訓練……」 「うん。明後日はなんだかんだでおそらくはナシゴを討伐……破壊しなければならないからね。あれを破裂させるイメージでも練っておいて」
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