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透き通るような空色の液体。
有給取って、ふらりと訪れた町外れの森の中。
「思い出屋さん」
不思議な看板に小首をかしげ、
私はその店に吸い込まれたように入っていく。
魔女にも似たおばあさんが一人経営していた。
商品の棚を見回して。
その液体の入った小瓶を見つけた時。
理由は分からないかったけど。
それでも、私はその小瓶に心を奪われていた。
見ると
「とうめいおくすり」
と、ラベルが貼ってある。
「おばあさん。これは……?」
私は、その薬について聞いてみた。
「……おや。この薬かい?」
おばあさんは、優しい目で小瓶を見つめた。
「これは、文字通り「透明」になれる薬だよ。」
「死ぬって訳じゃないよ……これを飲み干すだけで、心も体も透明になれるのさ。」
「以前買った客も、最初は色々怪しんでいたけど、使ってみて意味を理解したみたいで、嬉しそうに報告しに来てくれたっけねぇ……」
私は息を飲んで。
「透明に……」
と呟いた。
「気になるようだね……どうする?買うかい?」
気付けば、私は頷いていた。
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