0人が本棚に入れています
本棚に追加
家に帰って、リビングで空を見つめる。
掌には、あの小瓶が握られていた。
「……私の夢って、なんだったっけ?」
遠い、遠い記憶の向こう。
私は、思い出そうとして。
気付けば、苦笑していた。
小瓶を見て、思い出した。
……ああ。そうだ。
保育園の頃の夢。
「しょーらいのゆめは、おそらみたいにきれいで、とうめいなひとになることです!」
小学生から、中学生へ。
高校生から、大学生になるまで。
その夢は、少しずつ。
薄れて、消えていった。
悲しさを思い出せない程に。
(……ああ。そっか。)
気付いてしまう。
(……この薬は、私の夢なんだ。)
小瓶を見つけた時、心が揺すぶられていたのは。
この薬が、私の心を見透かしていたからだ……
小瓶の蓋を開ける。
空が赤く染まらない内に。
まだ、空が青い内に飲み干した。
その夢の薬は、
透き通るような味をしていた。
大好きなブルーハワイみたいな味だった。
世界から、今までの自分が透明になっていく。
反射した日差しで、心と身体は輝いた。
……そして。
私は、真にこの薬の意味を知った。
「……優しいなぁ。」
青くて、ただ綺麗な空の中で。
私の言葉は、空気のように。
透明になって溶けていった。
最初のコメントを投稿しよう!