とうめいおくすり

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家に帰って、リビングで空を見つめる。 掌には、あの小瓶が握られていた。 「……私の夢って、なんだったっけ?」 遠い、遠い記憶の向こう。 私は、思い出そうとして。 気付けば、苦笑していた。 小瓶を見て、思い出した。 ……ああ。そうだ。 保育園の頃の夢。 「しょーらいのゆめは、おそらみたいにきれいで、とうめいなひとになることです!」 小学生から、中学生へ。 高校生から、大学生になるまで。 その夢は、少しずつ。 薄れて、消えていった。 悲しさを思い出せない程に。 (……ああ。そっか。) 気付いてしまう。 (……この薬は、私の夢なんだ。) 小瓶を見つけた時、心が揺すぶられていたのは。 この薬が、私の心を見透かしていたからだ…… 小瓶の蓋を開ける。 空が赤く染まらない内に。 まだ、空が青い内に飲み干した。 その夢の薬は、 透き通るような味をしていた。 大好きなブルーハワイみたいな味だった。 世界から、今までの自分が透明になっていく。 反射した日差しで、心と身体は輝いた。 ……そして。 私は、真にこの薬の意味を知った。 「……優しいなぁ。」 青くて、ただ綺麗な空の中で。 私の言葉は、空気のように。 透明になって溶けていった。
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