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 スドウ先生が取り出した封筒の中には、折り紙くらいの大きさの1枚の紙が入っていた。南国のオウムの羽みたいな派手な緑色で、同じ模様がたくさん繰り返し描かれている。寄り目で見ると立体的に何か浮き出て見えるイラストに似ていた。 「毎日寝る前に、この紙の模様を眺めながら『絵がうまくなりますように』っておまじないしてみて。1日5分くらいでいいよ。人に見られたら効かないかもしれない。見つからないところにしまって、おまじないするときも内緒で、見られないように」  なんだか、思ってたのとちょっと違う。  これって、ただの紙だよね?  本当に毎日紙を眺めるだけで、絵がうまくなるんだろうか。  でも、もし本当だったらーー。  絵がうまくなるためだったら、なんだってするって決めたんだ。  僕は、スドウ先生にお礼を言って、紙の入った封筒を受け取った。  先生にもらったこの紙、誰にも見られないようにしなきゃ。 左足を引きずりながら、授業が終わる前に急いで教室に戻る。教室はもぬけの殻で、まだ誰も戻っていない。封筒が折れないようにクリアファイルに挟んで、大事にランドセルに入れた。  その後の授業中は、左ひじと左ひざの痛みよりも、ランドセルの中身が気になって仕方なかった。
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