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 スドウ先生に絵をもらってから、言われた通りに毎晩眺めた。 「絵がうまくなりますように」って、流れ星にお願いするみたいに。お父さんにもお母さんにも、誰にも見られないように気をつけた。眺めた後は、封筒に戻して、机の引き出しの1番下に(うず)める。4年生になってから1人部屋にしてもらってよかった。  絵は、うまくなってきたような、そうでもないような、まだよくわからない。  休み時間にみんなと自由帳ゲームで遊んでいるとき、たまたま担任のサイトウ先生がそばを通った。僕たちの絵を見て「2人とも、うまいなぁ〜!」と言ってくれた。  サイトウ先生は、僕のお母さんくらいの歳だ。結婚していて、ちょっと頭が薄いのを気にしている。怒ると怖いけど、いつも笑わせてくれて、クラスのみんなから好かれてる。  イナミくんだけじゃなくて僕も褒めてくれて、すごく嬉しかった。  毎晩絵を眺めておまじないをしている効果が出てきたかもしれない。 ※ ※ ※  絵を眺める習慣がついて2週間ぐらい経った頃、帰りの会の前に、サイトウ先生から声をかけられた。 「放課後、ちょっと職員室に来れる?」 「はい」  なんだろう、僕に頼み事かな。  学校行事に使うイラストを描いてほしいって頼まれたりして。  言われた通り、放課後に職員室に向かう。いつも一緒に帰ってるイナミくんには、先に帰ってもらった。  サイトウ先生は、自分の席の横まで来た僕に気づくと、職員室の奥のほうまで案内してくれた。2人掛けのソファが2つ、低いテーブルを挟んで向かい合わせに置いてある。前に教頭先生が、お客さんと会うときに使っていた場所だ。僕らはそれぞれのソファに腰かけた。  サイトウ先生は、少し前かがみで、テーブルに視線を落としていた。 「あのな、教えて欲しいんだけどーー」  ふぅ、と小さく息を吐く。 「イナミがコンテストに出そうとしてたイラスト、落書きでダメにしたの、おまえなんだろう?」
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