サレ夫

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サレ夫

病院に行く前に、一旦帰宅 医者に行く事を由香里には話していない これまでも決して会話の多い夫婦では なかったが、必要最低限の連絡はしていた 今日のこの事は、 その必要最低限にすら当たらない というのが私の判断だった 具体的な病名がわかれば その時に説明すればいい 由香里は外出しているようで 子供たちもまだ学校が終わっていない 家の中がシーンとしていた こんな昼間の時間に自宅にいる事は 滅多に無いからどうにも勝手が違う 以前ほど子供に手がかからなくなり 由香里も自分の時間が持てるのは良いことだ 2階の書斎に行き、スーツを脱いで カジュアルに着替える 書斎は、唯一落ち着く私の城 その時、階下から声が聞こえた どうやら由香里が帰ってきたようだ しかし、聞いていると由香里1人ではなく 男の声が聞こえる 「…子供らが帰ってきたのか?」 私はなんとなく嫌な感じがし 書斎からこっそりと顔を出して 声のする方を覗いてみた そこには由香里と、見たことのある男がいた 「あれは…片桐?」 その男は由香里の幼なじみだった 向こうの家に遊びに行ったこともあるし、 逆にうちに来てもらったこともある 「どういうことだ、まさか2人は…」 ふふふと笑う声、片桐が由香里に何か話しかける 2人はそのまま1階の寝室に入っていった いくら鈍い私でも、これから何が起ころうとしているかはわかる 足音を立てないよう階下に行くと 由香里の喘ぎ声が聞こえ始め 私はいたたまれず 気配を消して家を出た 自分が今見たことが信じられず その場を離れる事しか出来なかった
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