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「姉ちゃん。俺達さぁ、電車賃ないんだ……少し貸してくんないかなぁ」
『うぅ…』
「この姉ちゃん声帯に障害があるのか?
頷いたからオッケーだとさ」
爬虫類のような眼をした坊主頭が、あたしのバッグから財布を取りだした。
「おぉ! 姉ちゃん金持ちぃじゃん」
「全部取るような俺達じゃぁ、ねぇからよ」
あたしの財布から3万取って2千円だけ残し、あたしのバッグにしまった。
「おい! お前達。 何をやってるんだ?」
「なんだょ。おっさん!
……俺達は金を借りただけだょ」
「そうか。返す意志はあるんだな」
「おぃ! おっさんよ。
舐めた口、聞くんじゃねえぞ」
坊主頭の爬虫類のような目をした男が、威嚇(いかく)した。
「お前達、この近辺で殺人があったのを知ってるな」
相手を威抜くような鋭い目を3人に浴びせながら、警察手帳を出した。
格闘技でもやっているような分厚い胸、そして存在感だけで相手を萎縮させるような、
風格の持ち主だった。
『……』
(まぁ! この人警官だったの。以前のあたしだったらイケメンだしメロメロかも。
……今のあたしでもそうだから)
あたしは安心したのか硬直化していた身体が弛緩(しかん)した。
「明日、立川駅前の交番までお金を持って来い。
逃げるなよ。
刺殺事件とは関係ないと思うが、今日は非番でな」
逃げるように3人は姿を消した。
「やあ。奇遇だな。こんな所で再会するとは」
「えっ!
あたしを知ってるんですか?」
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