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「……どういう事ですか?」
あたしは、彼の普通と言う言葉に反応して尋ねた。
「私は交番で名刺貰ったのは初めてだ。
普通の人間は紛失届けに来て、店の宣伝なんかしない。
何故か名刺貰ってビックリして、思わず相手の瞳を覗き込んだ。
……その時の、助けを請うような眼差しに惹(ひ)かれて今日行った」
その場面を回想するみたいに、小田は虚空を見上げながら呟いた。
「で、妹は店ではどんな感じでしたか?」
「あんまり、そんな店には行かないけど繁盛していたな。
立川の場外馬券場から、徒歩10分ぐらい。
中に入ると、ボーイが3人いた。
その中の1人が指名があるか、聞いてきたので名刺の由美を言った」
「ふぅん……何時頃その店に?」
「店は8時からだったので8時10分頃に行ったが、由美は指名客が2人いて40分の待ちだった。
それで待合室で、ブランデーを飲みながら40分待った。
それからボックスに案内された。
前金制だったので指名料金込み1万円を払った」
小田が淡々とした口調で呟いた。
「……妹の様子は?」
あたしは、急(せ)かすような口調で云った。
「テーブル席に案内されて、暫くして由美が来た。
『由美でぇす~何時も指名ありがとう』
『この店は、今日初めてだけど……由美ちゃんに会うのは2回目』
『何処で会ったかしら?』
『携帯無くしてない?』
『えっ、どうして知ってるの?』
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