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あたしの夢は、自分のゲームを作る事だった。
念願のゲーム完成日が両親の結婚記念日とは、感慨深い物があった。
あたしは、うつらうつらとしていた。
プーンと潮の香りが鼻腔をくすぐった。
海岸沿いを車は走っていた。
あたしは車内に持ち込んだノートパソコンの上蓋を開いた。
そして私の自信作『死霊の館』を起動した。
不気味な効果音が鳴り響く。
「気味が悪い音楽ね」
母さんが後ろを振り返りながらつぶやいた。
「雨か」
父さんがぽつりと言った。
今まで晴れていたのに東の空は真っ黒な雲が渦を巻いていた。
「変ねぇ。
さっきまで晴れていたのに……」
母さんの独り言が聞こえる。
フロントガラスを大粒の雨が叩く。
あたしはゲームの効果音を小さくしようとするが逆に大きくなる。
その時、真っ黒な物がフロントガラスに映った。
『ドーン』
衝撃音と風圧であたしは意識が遠のくのを感じた。
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