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楓が由美と出逢ったのは、楓の住んでいるマンションの屋上。
屋上には人工芝生が敷き詰められベンチや大理石テーブルや腰掛けなどが設置してあり、
その腰掛けの下に彼女が倒れていたそうである。
楓は大理石のテーブルに缶ビールを置いた。
そして腰掛けに座ろうとしたら、人が俯(うつぶ)せに倒れていた。
『キャアー!』
楓は、てっきり死体だと勘違いして悲鳴をあげた。
悲鳴と同時に腰砕けになり、ペタンと座り込んだ。
これが由美との最初の遭遇だった。
あたしの悲鳴で、死体がムクりと起き出した。
『ギャァ!』
あたしは後ろへ下がろうとしたが、腰が抜けて足だけバタバタ。
『あの時は、死体だと完全に思い込んでいたので……』
苦笑いしながら腕時計に、チラッと視線を走らせて、
『後、五分で時間が来るけど延長するの?』
と、椿が耳元で囁いた。
『延長するよ。
ところでムクリと起き出してからどうなった?』
倒れていた女は、あたしが名前を聞いても答えない。なんで此処に倒れていたのって質問してもキョトンとしていた。
20分ぐらい押し問答をやっていたが、拉致が明かないので警察に電話しようと思った。
『……あたし……由美……』
名前だけでも思い出したので、時間が経過すれば思い出すかも知れないわ。
そう思って、あたしのマンションに由美を住まわせているのよ。
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