花の国の王女、ジゼル

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花の国の王女、ジゼル

 ジゼルは、花が咲き誇る国の王女として生まれた。  大陸内でもこの国は極めて小さい方に入る。そしてお世辞にも豊かとはいえない。  国の隣には最大の版図を誇る帝国があるが、そのむかし武力で各地を制圧した帝国がこの花の国を攻め落とさなかったのは「ここを領土として組み込んでもなんの価値もないと判断したため」だと言われることすらあるほどだ。  だとしてもジゼルは花の国も、国の陽気な民のことも大好きだったので、この国の王女として生まれたことに誇りを持っていた。  そんな王女ジゼルには一人の叔母がいた。  名は、フラヴィ。  夢で未来を見るという稀有な能力を持つフラヴィは美女としても有名だった。年頃になったフラヴィの元にはいくつもの縁談が持ち込まれ、最終的に帝国の貴族の下へ行ったのはジゼルが三歳だった頃のこと。  まだ小さかったジゼルは当時の記憶がほとんどないのだが、一つだけ。嫁ぐ前日にフラヴィがジゼルの部屋へ訪ねて来たときのことを覚えている。  黄色い花を持って現れたフラヴィは、 「ジゼル。いつか私の子と会ったら、仲良くしてあげてね」  との言葉をジゼルに残していた。
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