心がある場所

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 そんなジゼルに気づくことはなく、男性二人は話を続ける。 「珍しいですか」 「うん、あまり聞かないかな。象徴花は名の通り『象徴』だから、自分自身のイメージとなる花を選ぶ人がほとんどなんだよ」  ピエールの言葉を聞いたライナーは悩むかのように「うーん」と小さく唸る。 「……でも。好きな人のイメージが自分の身近な品にあったとしたら、その人を身近に感じられて嬉しいだろうなって思いませんか? 少なくとも僕はそんな風に思ってしまって……そうしたらどうしても、その花を象徴に、としか考えられなくなってしまって……」 「意外と情熱的なんだね」  ピエールは朗らかに笑う。一方でジゼルの胸は、どくんと大きな音を立てた。 (今……ライナーは「好きな人」って言った? それはもしかして、ライナーに想う相手がいるってこと?)  聞き間違いだと思いたかった。しかし、続くライナーの言葉が聞き間違いでないことを裏付ける。 「うん。やっぱり僕は僕自身でなく、相手の方のイメージを象徴花にします。もしもどうしてこの花にしたのか聞かれたら、一番好きな花だからって言います。僕の一番好きな女性のイメージに合う花ですから、この花が一番好きなのは間違ってませんし」 「これはまた言うねえ。でも私はその考え方、いいと思うよ」 「ありがとうございます!」 「で、何の花にしたのかな?」 「ええと……」  ライナーの声は少しはにかんだ様子だ。きっと今は頬を赤らめているはず。ライナーを見続けてきたジゼルには、彼がどんな表情をしているのかありありと思い浮かべることができた。 (ライナーの想う相手の花。……どんな花? どんなイメージの人なの?)
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