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一方で、ライナーもジゼルの変化には気づいていたようだ。
今まではジゼルがライナーを誘う側だったが、今度はライナーの方から「庭園で花のことを教えてください」や「城外の視察へ行きませんか」といった具合に暇を見つけては申し出てくる。
あまり断るのも姉弟仲に亀裂が入りそうな気がしたので何度かに一度はライナーの提案を受けたものの、ライナーと話すジゼルの口数は格段に少なくなっている。そこでライナーも「自分はジゼルに避けられている」と確信するに至ったらしい。
ライナーもまたジゼルに誘いをかけることがなくなっていき、会っても挨拶程度の会話しかしなくなった。たまに遠くから寂しそうなライナーの視線を感じることもあったが、それでもジゼルは彼に親しく話しかけようとは思わなかった。
本当はジゼルだってライナーと一緒に過ごせたらどれほど楽しいだろうと思う。
しかしライナーの襟元にはいつしか菜の花のピンが飾られるようになっていた。それはライナーの心が他の誰かのもとにあるという証拠だ。ピンを見るたびに胸が締め付けられるジゼルは、どうしてもライナーと行動を共にすることができなかった。
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