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 ーーーー…… 「高崎! 高崎渚!」  中年男性くらいの声がする。  タカサキ? タカサキナギサって何かしら。聞き覚えはあるのに。 「高崎!」  頭を軽く叩かれて、私は目を覚ました。 「高崎! 私の授業中に堂々と居眠りするのはやめなさい。後で職員室に来るように」 「……」  私、死んだんじゃなかったの? ここはどこ?  私はぼんやりする頭で辺りを見回した。大勢の若者が同じ服を着て、小さな机についている。  ああ、ここは……学校だ。  記憶が徐々に戻ってきた。  私はローラ、じゃなくて、そう、この先生が呼ぶ高崎渚という人物。そして、ここは高校の教室。 「高崎? どうした。具合でも悪いのか?」 「いえ、すみませんでした。大丈夫です」  椅子を引いて、姿勢を正す。  最近夢見が悪くてよく眠れないせいで、授業中毎日のようにうとうとしてしまう。  生々しいほどに鮮明な夢。  前世というものがあるのなら、私の見る夢はその前世の記憶なのではないだろうか。そう思うようになった。  かなり物騒なものだ。私はどうやら前世で自死をしたらしい。理由までは分からない。 「渚、最近授業中よく寝てない? 体調大丈夫?」  授業後、友人の愛花が声をかけてきた。 「うーん、なんか眠いんだよね。春だからかな」 「まあね〜、春は眠いよね〜」  同じくクラスメイトの莉奈が睫毛をいじりながら相槌を打つ。 「でもさ、最近渚、クマヤバいよ?」 「え?! ほんと? 見てくる」    トイレの鏡の前でパウダーをつけながら、確かにひどい顔してるなと思った。でも愛花たちに夢のことは言えていないし、言っても信じてもらえる自信がない。    私、なんで自死なんてしたのかな。  夢を見るようになってからずっと消えない疑問。それほど絶望することがあったんだろうか。陛下と呼ばれるほど身分が高かった私。今の自分とはかけ離れ過ぎていてその悩みも想像がつかない。  まあ、いいや。所詮、夢。本当に前世かどうかも分からないしね。
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