再会、その時ボクは誰を恨むべきか

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「おばあちゃん、また取れたぁ」  セーラー服姿の中学生が淳子さんの家に飛び込んできた。 「真由ちゃん、何が取れたの?」 「これ。縫って」  チャンス到来。待ちに待ったこの時。 「自分でやったら? この間、教えたでしょ。はい、裁縫箱」 「えーっ」 「練習よ」  しぶしぶスカートを脱いで、取れかけていたかぎホックを縫い付ける孫の針の動きを淳子さんは見守っている。あー、残念。あいつらもカップルだけれど、ボクらほどの深い仲ではない。 「真由ちゃん、上手、きれいにできたじゃない。あら、そっちも取れちゃってるわよ」 「あー、そうだった。でもこっちが直ったから、これはこのままでいい」 「両方止めた方が安心。片方だけだとうっかりずり落ちちゃって恥ずかしいかも」 「ハーフパンツをはいてるから大丈夫」 「せっかくだから、ついでに直したら? うっかりハーフパンツを忘れることもあるでしょ」 「そんなにうっかりするかなあ。これ、知らないうちになくなっちゃったんだよね。代わりある?」  淳子さんは裁縫箱の中からボクを含め同じ大きさのものをかき集めた。 「この五つの中からピチッと止まるのを探して」 「どれにしよう」  つ、ついにこの瞬間がやってきたー! お嬢さん、ボクを選んで。その彼女()はボクの伴侶で、工場からずっとふたりで一つだったのに、淳子さんがボクらを長く離ればなれにした。神さま、お願い。  必死の願いが届いたのか、お嬢さんはボクをつまみ上げると運命の相手である彼女にあてがい押しつける。ポチッ。
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