星との出会い

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今年の天文部は、5人の新入部員が入るらしい。 その中には、案の定…須藤環菜もいた…。 姉が部長だから人数合わせに入ってほしい、と言われたのだろう。 姉妹で、天文部をわがもの顔で牛耳るに違いない。 そんなところに、渓が1人で入ったら飛んで火に入る夏の虫…で。 いじめの標的にされそうだ。 (だから入らなくて正解だった…) …そう思うものの、なんだか釈然としない。 昼休みに校庭の脇を通って、図書室に向かって歩いていると、目の前にサッカーボールが転がってきた。 「鎌田サーン!」 吉岡颯汰が走ってやってくる。 サッカーのピステを着ており、額には汗をかいていた。 校庭でサッカーの練習をしているらしい。 「ありがとう! 止めてくれて」 「……別に止めたわけじゃ」 「いや、助かったよ。……あれ、どっか行くの? もしよかったらサッカー見てかない?」 「……」 渓は無言で歩き出そうとする。 「ちょ…っと待って!」 「え?」 眉をしかめて、吉岡の方へ振り向く。 吉岡が渓の肩を指差して。 「毛虫がついてるよ」 「キャー!!」 渓が体をよじって、自分の両肩をバンバン叩く。 嫌い!毛虫嫌い! 「嘘だよ」 「え?」 「鎌田サンを驚かせたくて言っただけ」 「……っ!!」 吉岡は腹を抱えて笑い出す。 「アハハ…超うけるわ。キャー!!って」 「…………」 渓はサッカーボールを拾うと、それを自分の背後にぶん投げた。 「あ、ちょっと!おいっ!」 吉岡は、慌ててボールを追いかけていく。 「フンッ」 「そうたー! 何やってんだよー!」 校庭にいるチームメイトたちが笑っている。 やりとり見られてた…? 渓がいる場所の向かい側には、やたらと人が並んでいる。サッカーを見学していたギャラリーだということに気がつく。 今のやりとり、見られてた? 血の気がひいた渓は、顔を隠しながら、足早に歩いていった。  ✕ ✕ ✕ 「渓ちゃんは何やっても目立つんだよ」 「周りが放っておかないから」 小学生の頃……誉め言葉だと勘違いした。 でもそれは次第に「仲間外れ」の理由になっていった。 「渓ちゃんは目立つし、うちらと合わないよね」 「今までうちらのこと見下してたでしょ。自分が一番可愛いからって」 彼女たちが持つ負の感情が「嫉妬」だと気づいたのは中学生の頃。 渓は用心深く目立たぬよう、新しい人間関係を築いてグループに属してきた…のに。 学年1カッコいい先輩が、渓を好きだという噂が立って。 また、あからさまに無視されるようになった。 「いいよねぇ」 「そんなことない…よ」 「謙遜するなんて嫌味ー」 「……」 ✕ ✕ ✕ 渓は自分の心を守るため。 …1人になった。
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