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オリエンテーションの夜
オリエンテーションの当日…。
朝早く起きて、学校前に来ていた大型バスに乗りこむ。
平日ということもあり道路が混んでいたが、なんとか予定通り、昼前に着いた。
今晩宿泊するキャンプ場は山の中腹にあって、少し歩くとハイキングコースにさしかかる。コースをのぞきこむと、奥には木漏れ陽がさんさんと差し込む森が広がっており…。
夜、この森が肝試しの会場になるという…。
マイナスイオンはもちろん、自然の息吹がたっぷりだ。
渓も久しぶりに(あー気持ちいい…!)とリフレッシュ気分を味わった。
それでなくとも、本日貸し切りのため他の客はおらず、みな開放的になっている様子だ。
普段より騒がしい。
バンガローに荷物を置いたら、さっそく昼飯のカレー作りをスタートする。
渓は、ジーンズとパーカーという色気も何もない格好をしてきたが。
環菜は、ガーリーなオーバーオールを着て、頭はフワフワのだんごを結っている。
スタイルがいいので、まるで雑誌から抜け出したティーンモデルみたいだ。
同じく派手な女子や、吉岡たちのようなイケ男子たちと、キャッキャと楽しくやっている。
バスでも…うるさかった。
「須藤さん、Aグループなのに…Fグループ行ってるんだけど」
佐藤さんがぼそっと不満をもらす。
「1人足りないから、私たちの班だけ遅れちゃいそう……」
「……」
同じくAグループの男子たち4人と、本来は8人のなか、環菜抜きの7人で…黙々と野菜を切る。
「大丈夫だよ。ねえ、井上くんたちさ。野菜切り終わったら教えてね」
小津さんが明るく場をなごませる。
「…………ン」
Aグループの男子たちは大人しく、必要以上に話をしない。
ずっとだんまりなので確かにつまらないが、渓も同じようなタイプなので何も言えない。
「アハハ…吉岡、違うってー!」
ときおり聞こえる、環菜の笑い声にイライラする。
ザクッ!ザクッ!
佐藤さんもにんじんを切る音が…なんだか荒い。
そのとき。
「なんで須藤がここにいるんだよ」
渓はピーラーを持つ手を止める。
(この声……)
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