星との出会い

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私は…陰気なこじらせコミュ障。 そう、鎌田渓は自覚している。 けれど…。 合わない人とは付き合いたくない。 無理して付き合ったって、結果的に嫌な思いをするだけだし。 15年生きてきて悟った、渓なりのポリシーだ。 本当は外の空気を吸いたかったが、屋上は立入禁止になっていた。 仕方なく、その途中にある階段の踊り場の窓から外を眺める。 屋上でなくとも、一人になれればどこでもいいのだ…。 窓の下には校門一帯が広がり、続々と登校する生徒たちが見えた。 桜の花はとうに散り、今では濁ったピンクらしき点となり、地面の隅に追いやられている。 入学式で桜が咲くなかを歩くのが、夢だったけれど。 温暖化の影響なのか、早々と桜は咲いてしまい、今までの入学式では、散った桜びらしか見たことがない。 視線を、横にスライドすると…。 重厚な鉄門、そばには明治時代からあるという由緒正しい石碑がある。 文武両道をモットーに掲げた、歴史のある県立高校。元は男子高だったという。 県内で1、2を争う偏差値の高い進学校で、先生からも入るのはかなり難しいと言われていた。 でも渓は絶対ここに入りたいと思い、中3の1年間ひたすら勉強をして、見事合格を勝ち取った。 同じ中学からは全部で4人進学して、女子は渓ただ1人。 知り合いがいないのは、渓にとってメリットだった。 高校でも、目立たず平穏無事に過ごしたい。 青春? 恋愛? 友情? そんなもんはクソくらえ。 サッカー部のマネージャーなんて…絶対やるもんか。 高校で、とにかく勉強を頑張って。 なるべくお金のかからない国立大学に行って。 最終的には、国家資格をとって。 …誰にも頼らず、この先も1人で生きていく。 渓はひそかに決心していた。
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