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お昼になり、渓はカバンからパンを取り出す。
4月中旬、クラスではさっそく仲良しグループができて、一緒に食べるために机を移動させていた。
この高校は女子が全体生徒の1/3ほどで少ない。明るい性格の女子たちは入学そうそう、リア充タイプ同士ですでにくっついてしまった。
例えば、小津深雪さん、福田菜月さん、渡辺心咲さんとかは、いつも仲良し。
お昼になると1ー2に集まって、笑いながらお昼を食べている。
会話を聞くわけではないけれど、他愛ない雑談が耳に入ってしまって、思わずクスッとすることもあった。
中学時代のときのリア充軍団とは……全然違う。
彼女たちだったら、仲間外れ…とかくだらないことはしないような気がするが。
でも…わからない。
突然、本性が出て…くることもあるし。
渓は自席で早々と食べ終わると、図書室に行くために席を立った。
小津深雪さんがチラッと渓を見る。
(……なんだろう。笑ってたのバレたかな)
渓はそそくさと、教室から出ていった。
図書室は、第二校舎へ行く渡り廊下の直前に位置している。
普通の教室の3倍広く、本の冊数が図書館並みにある。
渓が好きな場所のひとつだ。
渓が913の日本小説コーナーの本棚を眺めていると…。
「ねーねー、さくちゃーん。次は、何読むの?」
「……」
「好きな作家教えてよ」
「ここ、図書室だけど」
「だから?」
「静かにしろ、って言ってんの」
(……!!)
渓は驚いて、声をした方を急いで振り向くが…。
ちょうどドアがピシャンと閉まった後だった。
図書室の外に出たらしい。
廊下で、さっきの男女の押し問答が続いているのが聴こえてきた。
「ねーってば」
「触るな…」
「だって答えてくれないんだもん」
「まとわりつくな!」
「ひどーい」
ずいぶんハッキリ言う男の子だな。
どうやらカップル…ではなさそう。
女子にチヤホヤされてその気になる男子もこれまでにいたけど。
今の男子はなびかないで、心底嫌そうだった。
しつこい女子をシャットアウトして、
なんかちょっと……やりとり聞いてて気持ちが良かった。
…声の主はどんな人だろう。
ちょっと見てみたかったかも。
渓はそう思いながら、本棚から1冊本を取り出し、閲覧机で読み始めた。
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