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文化祭展示用のテーマ、悩んでいたけれど「人魚」を調べることにした。
それを佐藤さんに告げたところ…。
「…人魚ォ? ぷっ!」と鼻で笑われる。
「…悪い?」
思わず眉をしかめる。
「いや、悪くはないけど、ありきたりだな、って」
(ちなみに佐藤さんは「小豆洗い」だって。
…マイナーすぎない?)
渓に声をかけると、ちょっとためらいつつも「手伝いたい」と引き受けてくれた。
渓は、天文学と民俗学をミックスした学問「天文民俗学」を築きあげた『野尻抱影』について調べたいのだそうだ。
…マイナーすぎない?(2度め)
また、民俗学研究会と天文部は共同で、「願いごと星守り」なるものを作成することになった。
発起人は、須藤瑛茉と環菜の姉妹。
願いごと…というあたり、やっぱり環菜は七夕イベントに心残りがあったんじゃないか、実はやりたかったんだろう、と思う。
モニュメントをあんだけ壊しておいて、なーにが願いごとするためのお守りだぁ?と怒る気持ちはあるが、とりあえず乗っかることにした。
このマイナーな展示を、盛り上げたい気持ちはあるし…。
「願いごと星守り」は、願いごとを書いた紙を、フェルトで作った小袋に入れる。
フェルトのカラーはそれぞれ違っていて、
勉強運は青、恋愛運はピンク、金運は黄色、健康運は緑、その他は赤。
それを持ち歩き、ときどき星にお願いするのだそうだ。
恋愛運のピンクに関してはペアで2個購入してもらう。両想いならお互いに交換して持ち歩く。片想いなら自分で持つ分と、その相手に渡す分。
告白できないと自分で2個持ってしょっぱい想いをするはめになるから、告白の覚悟を決めないといけなくなる。
放課後は、もっぱらパネル&お守り作りに、いそしむ。
パネルは模造紙に書き込んで。
お守りはちくちくフェルトを縫う。
須藤姉妹は家の用事だとかで、しばらく活動できず欠席している。
相変わらず美味しいとこばっか持っていく、嫌なオンナたちだ……。
「あ! 山セン!」
「!!」
傍らの渓がビクッと肩を震わせる。
「おー。例のお守りか」
山センが様子を見にフラリとやってくる。
「先生も1つどう?」
佐藤さんが声をかける。
「俺は金がいいかな」
「金なんてないよ。金運だから黄色だね」
「金を呼ぶ妖怪でも召還しろよ」
「…えー」
「タヌキの袋か?」
渓に話しかける山セン。
渓がフンとそっぽを向く。
(好きな女の子をからかう、って…大人でもあるんだな)
私はひそかに呆れる。
「山センにはこれ。試作品をあげます」
私は赤い袋を渡す。
「この色は?」
「諸願成就。なんでもOK。ただし叶うまで中を開けちゃダメです!」
「フーン」
と指先で持って、眺めまわす。
「もらっとくわ」
山センは嬉しそうに笑った。
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