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文化祭が始まった。
結局、展示とお守りだけでは客入りは難しいということで、「天文民俗カフェ」と名を変えてお茶を出すことになった。
小豆洗いに扮装した佐藤さんが接客をしてくれて、あずき最中も出したりするらしい…。
何事もなかったように、渓と私は仲良しに戻り…。
文化祭当日は、菜月と心咲と4人で回ることになった。
「ちょっと!3年のクラスでフランクフルトが売ってるらしいよ!」
くいしんぼうの菜月が大騒ぎする。
「ちょっと、渓。一緒に付き合って。私1人じゃ4本は持てない」
「えー」
渓が菜月にしぶしぶ付き合う。
(この2人もなんだかんだ仲良しになったな)
私は微笑む。
「心咲ー」
傍らの心咲が呼ばれて、手のひらを立てて、ゴメンと合図をして離れていく。
思いがけず、1人になってしまった。
何かあればスマホもあるし、ブラブラするとしますか…。
と、そのとき。
須藤環菜と、他高の制服を着た4人組の女の子たちが話している光景が見えた。
「情報ありがとー」
「調子にのってるみたいだから、ちょっと締め上げてほしいんだよね」
「中学時代だって、いろんな男とっかえひっかえしてたの」
「陰気だったくせに、あんなカッコいい彼氏できたなんて許せない」
「わかった、私があなたたちの仇を討つから」
環菜がこちらをチラッと見る前に、物陰に隠れた。
(…誰かを罠にかけようとしてる。また変なこと企んでるんだ。本当に嫌な奴)
歩き出そうとすると。
「小津っち~!」と、後ろから環菜に声をかけられた。
聞いてたのバレてた?
「私ね、彼氏できたの」
まさか吉岡…?と、胸がツキンとする。
「……やだー。心配しないで。吉岡じゃないから。あ、今でも好きなんだよ? でもタイミングずらそうかな、って」
「……」
「元カレなんだけど。私のこと忘れられないんだって。復縁しちゃった。キャハッ」
(ああ、そうですか)
何を聞かされてるんだろ、私。
「良かったね」
「だからねぇ。吉岡はしばらく小津っちにあげる」
「は、は? 何言って…」
「小津っちが吉岡を好きなことは知ってるから。邪魔できないように排除してあげるから」
「何を…」
「吉岡の心、欲しくない? ずっとずっと片想いなんでしょ。一度くらい…キスしてもらったら?」
須藤環菜は、にっと笑った。
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